「政府の役割とは何か」古典派経済学に学ぶ本質 J.S.ミルの思想から考える5つの重要な問題点

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一方、一切の発議および指揮の権限が政府の手に帰し、私個人たちはいつもそれの永久的保護のもとにあるような感じをいだき、またそのように行動するようになるにつれて、民主的制度も国民のあいだに自由への欲求を開発しないで、かえって地位および権力へのあくなき貪欲を開発する。そして国の知性と活動性とを、その主要な事業に向かわせないで、利己的な褒賞やつまらぬ官職的虚栄を獲得するためのみにくい競争に向かわせるものである。(J.S.ミル『経済学原理』(五)301−302ページ)

ミルは本質的な問題を提言している

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これは、福祉国家について論ずるときに、本質的な問題を提供していると思います。

ここでも、政府の役割と市場、そして社会の人びとの力のバランスが問題にされていると言っていいでしょう。

まさに政府の役割を考えるということは、そこに尽きるように思います。

西 孝 杏林大学総合政策学部教授

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にし たかし / Takashi Nishi

杏林大学総合政策学部教授。1961年東京生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業、同大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。専攻は、マクロ経済学、国際金融論。著書に『イントロダクション マクロ経済学講義』(日本評論社)、『社会を読む文法としての経済学』(日本実業出版社)ほか。

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