日本を輸出大国にした「コンテナ」知られざる凄さ ただの「鉄の箱」じゃない!グローバル化の立役者

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ちなみに、前掲のランキング表では、どのような企業がコンテナ輸送を多く利用しているか、傾向を見ることができます。

2021年で多くのコンテナ貨物を輸入していた代表的な業種はウォルマートやターゲット、ホーム・デポをはじめとする大手小売業です。小売以外にもアシュレイファニチャーやイケアなどの家具販売業や、ドールやチキータブランド、デルモンテなど食品関係、サムスンやLG、ハイアールなどの家電販売業も上位となっています。

日系企業では、自動車関連企業が多くみられます。トヨタグループの貨物を取り扱う豊田通商にくわえ、三菱自動車が上位荷主に顔を出しています。ほかにもブリヂストン、トーヨータイヤ、横浜ゴム、スバル、日産自動車やホンダといった名前も100位以内にあります。自動車以外には、クボタ、パナソニック、ブラザーインターナショナルなど建機、家電・複合機関連の企業の名前が上位に入ってきます。

経済の先行指標としての側面も

コンテナ輸送は、国際貿易の発生を受けて生じる「派生需要」です。そのため、輸送量は輸入国側の経済状況に大きく影響を受けます。一方でコンテナ輸送は、今後生産・販売される製品や経済の先行指標としての側面を持ちます。これは「コンテナの動きで経済を読む」ときにも大事になってくる話です。

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例えば小売業者やメーカーは、今後の販売見込みから輸出や輸入の計画を立てます。先述したウォルマートのような小売店での新製品の発売をイメージしてもらうとわかりやすいかもしれません。新製品は発売日前に小売店の店頭に並んでいなければならないため、遅くとも数日前には物流センターや卸売業者に届いているはずですし、さらに数週間前には工場で生産されているか、輸入されていなければならないでしょう。

そうすると数か月前には部品や材料が調達されていると考えられます。この流れのどこかで、コンテナ輸送が関係してくる可能性がかなり高く、輸送量の動向に現れる、ということです。

前述のようにウォルマートは、販売している品物のかなりの部分を中国や東南アジアからコンテナ貨物の形で輸入しています。ウォルマートでの販売に先んじて輸入が行われるため、北米往航のコンテナ輸送は、ウォルマートのアメリカ国内売上高のデータより早く発生する傾向がみられるというわけです。

松田 琢磨 拓殖大学商学部 国際ビジネス学科教授

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まつだ・たくま / Takuma Matsuda

筑波大学第三学群社会工学類卒業、東京工業大学大学院理工学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(学術)(東京工業大学)。専門分野は海運経済学、物流(国際・国内)。コンテナ輸送、市場と業界の動向、国内雑貨輸送に関して調査・研究を進めている。共著書として『新国際物流論 基礎からDXまで』(平田燕奈・渡部大輔との共著、晃洋書房)『日の丸コンテナ会社ONEはなぜ成功したのか?』(幡野武彦との共著、日経BP)、著書に『コンテナから読む世界経済』(KADOKAWA)がある。

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