まるで宮殿、インド「世界遺産の駅」の豪華絢爛 ムンバイのターミナル、英印の建築様式が融合

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CSMTの旧名は「ビクトリア・ターミナス」という。これは竣工当時、インドをはじめとする世界各地に植民地を持ち、繁栄を極めた大英帝国の象徴だったビクトリア女王の名を冠したためだ。在位年数は63年間と、先に亡くなったエリザベス女王2世に次いで長い。ビクトリア女王はさらに、初代のインド皇帝を名乗り、1877年に即位しているが、駅はその翌年に着工。1887年のビクトリア女王即位50周年を記念して開業した経緯がある。

CSMTは、「これが駅だ」と言われなければ、宮殿か古城かと思うほどの壮麗な建築物だ。フレデリック・ウィリアム・スティーブンスというイギリス人建築家が設計、ビクトリア・ゴシック建築様式をベースに、石のドームや尖塔などインドの伝統的な宮殿建築の特徴が随所に見られる。

ムンバイCSMTのドーム
中央にある高いドームの内部は八角形のリブ構造(筆者撮影

「文化の融合を示す優れた例」

この駅舎は、イギリスの建築家でビクトリア朝のゴシック建築復興の中心人物でもあるジョージ・ギルバート・スコットが1873年に設計したロンドンのセントパンクラス駅とよく比較される。

セントパンクラス駅は、ドーバー海峡のトンネルを通ってイギリスとフランスなど大陸各国とを結ぶ国際特急「ユーロスター」が発着するターミナルだ。広くて高いドームを持ち、赤色レンガ積みの外見は大英帝国の栄華を思い起こさせるにふさわしい重厚な造りとなっており、ロンドン市内はもとより、イギリスの駅舎の中では最も歴史的風情がある。ところが、多数の塔やタレット(小塔)、中央の大きなリブドームを持つCSMTの凝りようと比べると、セントパンクラス駅は足元にも及ばないといっていい。

ユネスコは、CSMTの世界遺産登録に次のような説明を添えている。

●インドの主要な国際貿易港であるムンバイのシンボルであるこのターミナルは、1878年から10年の歳月をかけ、中世後期のイタリア建築をモデルにしたビクトリア朝ゴシック様式で建てられた。その際立った石造りのドーム、タレット、尖ったアーチ、風変わりなグランドプランは、インドの伝統的な宮殿建築に近いものがある。
●イギリスの建築家とインドの職人とが協力し、インドの建築の伝統や慣例を取り入れ、ムンバイ独自の新しいスタイルを作り上げた、2つの文化の融合を示す優れた例である。

現在は、平日の日中に人数限定で駅舎内を参観する「ヘリテージツアー」が行われている。世界文化遺産となっている同駅舎を積極的に見せたい、と一般客向けに開放しているもので、現在はムンバイ周辺の鉄道事業を管理するセントラル・レールウェイの本社として使われている「中の部分」をくまなく見せてくれる。

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