EV普及で「オーストラリア」が超重要国になった訳 日本にとっても大事なリチウム供給国になった

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世界で埋蔵が確認されている原油のおよそ6割がペルシア湾岸に集中していることを考えると、中東情勢が原油の産出量、ひいては石油価格に影響を与えることは必然です。多くの人々が、これを「地政学的リスク」と呼んでいるわけです。

かつて冷戦の時代は、東西間交流があまり行われていませんでした。つまり西側諸国はソビエト連邦からのレアメタルの輸入が困難だった時代です。そこで、レアメタルの供給地として南アフリカ共和国を重要視していました。

南アフリカ共和国はレアメタルを輸出する代わりに、「アパルトヘイトの黙認」を要求していました。西側諸国はアパルトヘイトを黙認し、南アフリカ共和国からレアメタルを輸入していたわけです。

しかし、東西冷戦が終結すると、西側陣営は旧ソビエト諸国からのレアメタル輸入が可能となり、南アフリカ共和国のレアメタル供給地としての重要性が低くなります。

そうなると、西側諸国は手のひらを返したように「アパルトヘイトはけしからん!」とばかりに経済制裁を強めていきました。これによって、ついに南アフリカ共和国はギブアップ。アパルトヘイト廃止にいたったというわけです。

現在のオーストラリアは「多文化主義(multiculturalism)」を採用しており、白豪主義はすでに撤廃しています。最近はアボリジニー(aborigine)とは呼ばず、「オーストラリア先住民(Indigenous Australians)」などの呼称が広まっています。南アフリカ共和国のようなことはないでしょう。

オーストラリアの競合相手になりそうな3国

リチウムは海水にも含まれていますが、密度が低いため商業ベースに乗せられるだけの抽出量は期待できません。埋蔵量から考えて、オーストラリアの競合相手国になりそうな国は、ボリビア、チリ、アルゼンチンが考えられます。これら3カ国を結ぶ「リチウムトライアングル」には塩湖が見られ、ここからリチウムが採掘されています。

ボリビアの塩原(学術的には「塩原」が正しい)といえば、ウユニ塩原が有名です。私は2018年3月にウユニ塩原に行きましたが、それはそれは言葉を失うほどの絶景でした。

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