一時急落した原油価格は夏前に再び上昇しそうだ 世界的な不況の中でも、需要は次第に逼迫へ

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また、すでに3月3日にはウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙が、「アラブ首長国連邦(UAE)がOPECからの脱退を検討している」との観測記事を出したことで、相場が一時急落する場面も見られた。だがその後はすぐに上昇に転じている。

UAEの関係者からこれを否定する発言が相次いだこともあるが、仮にUAEがOPECから脱退、独自に増産を進めたとしても、同国の生産余力も限られており、生産がそれほど増えることはないとの見方が下支えになったものと思われる。

OPECプラスの生産はあと数年伸び悩む

実際、新規の石油開発は投資が行われてから実際に生産が増えてくるまでに5年以上かかる場合がほとんどだ。OPECプラスの生産は、少なくともあと数年は伸び悩むことになるだろう。一方で需要は経済成長に伴って年々増加するものであり、世界需給の逼迫傾向も続く可能性が高いと見ておいたほうがよいのではないか。

OPECプラス以外の産油国に目をやると、アメリカのシェールオイルやカナダのオイルサンド、ブラジルの深海油田などには生産余力が備わっていると言われる。だが、それらはどれも生産コストの高い油田であり、現在の価格水準では採算が合わない可能性が高い。もちろん価格が1バレル=90ドルから100ドルというところまで回復してくれば、生産も徐々に増えてくると考えるが、短期的に生産が大幅に増加するとは期待しないほうがよさそうだ。

また中東情勢の緊迫など、産油国の情勢不安による突発的な供給停止にも十分な注意が必要だ。イランとサウジアラビアの関係改善が取り沙汰されているが、両国関係は報道されているほど大きく改善したわけではない。

イランが直接、あるいはその影響下にあるイスラム武装勢力を使ってサウジを攻撃するリスクは依然として残っていると考えておいたほうがよい。実際、2019年にイエメンの武装勢力フーシがドローンによってサウジの油田を攻撃、一時的に同国の生産が半分にまで減少、石油市場が大混乱に陥ったのは記憶に新しい。

現在でこそサウジ側も万全の防衛体制を敷いているが、万が一、同様の攻撃が再び行われ、しかもそれがうまく成功した場合にはどうなるか。ほかの産油国の生産余力が乏しく、昨年の大放出によって戦略備蓄が大幅に減少、追加の放出が難しくなっている状況下、市場が当時以上のパニックに陥ることは間違いないと思われる。

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