しかし、何度もその制裁の対象になったロシアや中国などが、このやり方にいつまでも我慢し続けるわけではなかったのだ。ウクライナ戦争に対するロシアへの制裁が功を奏さなかったのは、制裁慣れしたロシアがその抜け道をすでに見つけていたことにある。
もうずいぶん前から、ロシアや中国などは金の備蓄を始め、自国通貨の価値の安定を図り始めていた。そして、ドルによる多国間決済制度に代わるものとして2国間決済制度を導入し、国際貿易を維持することに成功する。
そしてBRICSという新興国の経済グループの制度を拡大し、中国の元を中心とした新しい多国間決済制度を模索し始めた。もちろん、その先には人民元でもない、新しいデジタル通貨というものも構想されている。
ロシア、中国が世界通貨をつくったら
かつて社会主義体制では「振替ルーブル」という決済制度があった。この制度は社会主義国で相互の互恵貿易を前提にしていて1国が豊かになることを避ける決済制度であり、帳簿上でお互いが黒字、赤字にならないように調節するメカニズムであった。ただ、この振替ルーブルは、IMF体制のドルより世界貨幣としての流通性がなかったことによって、最終的には崩壊してしまった。
ロシアや中国が元もしくはルーブルなどにより、新たな世界貨幣としての制度作りを始めたら、いったいどうなるだろうか。そうなるとドルの世界貨幣としての流通性は限定される。とりわけ、エネルギー資源や原料の多くがBRICSに賛同する諸国にあることで、ドルによる資源や原料の購入ができなくなるのだ。ペトロダラーという言葉は、アメリカが自国で刷った通貨で、石油資源を安く叩いて買うという制度であった。それが機能しなくなったらどうなるか。
もっといえば、すでに金融やサービスに特化している西側諸国は、農作物や工業製品をBRICSの諸国に大きく依存している。アメリカは財政赤字と貿易赤字を抱えながら、どんどんドルを乱発し、これらの諸国から製品を買っていたのだが、それができなくなるのだ。
こうして起こった現象が、世界貨幣であったドルの価値低下である。流通領域が狭まり、価値ある通貨として認められなくなれば、ドルは売られ、金に代わっていく。アメリカの国債を売っている中国などの国は、国債を売って得たドルを、金へ交換することで、ますますドルの価値は低下している。
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