只見線に雪月花、東急は四国「観光列車」新時代へ 他社線での営業運行が全国各地で動き出した

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では、鳥塚氏ができることは何か。それが雪月花の只見線乗り入れだった。「運行再開後のさらなる復興を支援したい」。もし、雪月花が只見線を走れば大きな話題になるに違いない。雪月花は越後湯沢や長岡、新潟などほかのエリアへの入線実績がある。只見線への乗り入れも物理的には可能だ。鳥塚氏は2022年の秋頃から雪月花の只見線乗り入れに向かって奔走を始めた。

只見線の区間には新潟県も含まれる。利用客が新潟県内で宿泊や食事をしてくれるかもしれないという期待もある。トキ鉄の大株主である新潟県の花角英世知事は、「どんどんやったらいい」と鳥塚氏の背中を押した。

JR東日本や福島県、東北運輸局との協議も順調に進み、現在は運行に向けて最終調整中。運行は6月17、18の両日を予定している。17日に直江津駅を出発し、小出駅から只見線に入り、会津若松駅へ向かう。18日は会津若松駅から同じコースを戻る。大手旅行業者と連携し、4月にも予約受け付けを開始したいという。

知事「おすすめ路線はどこ?」

鳥塚氏は、「雪・月・花は中国人が好きな文字だし、車両の赤い色も中国人にとっては縁起がいい色。雪月花が只見線を走れば日本どころか世界中で話題になる」と期待する。当然、それは新潟県の存在を世界中に宣伝することにもつながる。

「窓が大きい車両だから風景のきれいな場所を走るにはぴったりなんだよね」と花角知事が言う。「只見線以外の路線を走るのはどうでしょうか」と水を向けてみたら「私は磐越西線なんかいいと思うけど、あなたのおすすめの路線はどこ?」と逆質問された。新潟県はやる気まんまんだ。

雪月花の車両デザインを担当した建築家の川西康之氏にも話を聞いてみた。「雪月花はえちごトキめき鉄道の路線を走ることを前提に設計した」と言い、「ほかの路線を走ることはまったく考えていなかった」。

でも、川西氏は「只見線乗り入れは楽しくてすばらしいことだ」と大歓迎。ほかの路線への乗り入れについても「大糸線はどうでしょう?」と提案してくれた。誰もが観光列車の他路線乗り入れに夢を持っている。

そして、東急の髙橋社長はロイヤルエクスプレスの運行について「北海道に続く、次のエリアも模索している」という。2月6日付記事(東急と新潟県が協定、「豪華列車」相互運転も実現?)ではロイヤルエクスプレスと雪月花の相互乗り入れの可能性について言及したが、両者はもっとスケールの大きな取り組みを模索している。

観光列車が自社の範疇を超えて全国を走る「観光列車の新時代」。そんな鉄道ファンの夢が当たり前の光景になる日は遠くない。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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