インフレに「強い業種」「弱い業種」の意外な実態 統計的手法で「上がる業種」「下がる業種」を抽出

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実際に図で見ると物価と株価はおおむね連動しています。特に、2012年11月に当時の野田佳彦首相が衆議院の解散を表明した後のアベノミクス相場以降は、物価の継続的な上昇と株高トレンドが連動してきました。つまり“インフレでは、株価が上昇する傾向”となっています。このような「インフレ⇒株高」の傾向には、さまざまな説明がなされていますが、感覚としてわかりやすい理由は次のようです。

インフレ時に株価が上昇する傾向にあるワケ

会社が所有する土地や建物などの「資産」から、銀行からの借り入れなどの「負債」を引いたものが、その会社の株主が保有する権利があると見られる資産(純資産)と言えます。専門用語で言えば「残余財産分配請求権」と関係してきますが、株式は企業が所有する土地や建物との結びつきが強いものになります。会社が所有している土地がインフレで値上がりしたなら、純資産も実質的に値上がりします。これに連動して株式の価値も上がるため、株価も上昇するというわけです。

とは言え、留意すべき点もあります。上図には①~④の4つの矢印が示されていますが、これらの4回は消費者物価指数(青グラフ)が急激に上昇した場面です。①は1997年の消費増税、②は世界景気拡大、過剰流動性により商品市場への投機的な資金流入、③はアベノミクスによる景気拡大期待、そして足元の④は、ロシアのウクライナ侵攻による供給面の制約があり商品市況が上昇したことと、円安による輸入物価上昇、などが主因です。

そして、こうした短期的な物価の急騰時には株価(赤グラフ)も短期的に下落しています(上図中の4つの〇)。このような「物価急騰⇒株安」はさまざまな要因がありますが、一言でいえば“物価の急騰に経済全体の対応が遅れてしまう”ことが理由となります。

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