廃線跡の旅人宿「天塩弥生駅」では何が起きる? 深名線の跡地に「駅」を建設、営業は週末のみ
そして開業日の3月26日にも、社長はご祝儀5万円を持って駆けつけてくれた。「気持ちが通じた、というのがすごくうれしかったですね」
旅人宿「天塩弥生駅」は、北海道新幹線開業日と同じ、2016年3月26日に営業を始めた。宿は最初から盛況で、テレビの取材が入るなど、大忙しだった。
現在、宿の定員は、コロナ以降から減らして4人としている。平日は名寄市の市議会議員をしているそうで、基本、週末しか営業しない。定例会が始まると、全て休みになる。
――通常はどんな方が泊まりに来ますか?
「廃線跡めぐりをされている方とか、元鉄道員も来ます。うちはリピーターも多いのが特徴です。一番多く泊まられた方は120泊くらい。50泊以上は何人もいますね」
――すごいですね! なぜここにまた泊まりたくなるのだと思いますか?
「この雰囲気とか、みんなでお酒を呑んでわいわいするこの時間、ばばなさんの食事など、『人』に会いに来る方が多いです。深名線は廃線から20年もたっているので、たいていの駅は忘れられてしまいますが、この宿を建てたことによって、天塩弥生駅は忘れられず、みなさんの思い出の扉を開くことになったのだと思います」
幻の「音威子府そば」も登場
翌朝の食事では、いろいろなお膳の他に音威子府そばも提供された。今ではもう食べられない、幻の音威子府そばに出会えて、とても感激した。私が宿泊したのは2月半ば。その時点で「あと100食分ほど」とのことだった。
実は天塩弥生駅に来る前、2023年4月1日に廃止になる予定の留萌本線・留萌駅に行ってきた。ここに来るのは2回目。前回同様、駅のそば屋で「にしんそば」を食べ、留萌駅弁の「にしん親子弁当」を買った。駅がなくなるとこれらは食べられなくなるのか、というとそうではない。歩いて10分ほどの場所にある「道の駅るもい」に、たいていGW明け〜10月末に、留萌の駅そばを経営している「むさし家」がお店を出しているのだが、つい最近、うれしい情報を聞いた。「道の駅るもいで、これからは通年営業していくことになりました。4月半ばからの予定です」(社長・武蔵照義さん)
【2023年3月23日16時00分 追記】最近の状況について、上記のように加筆しました。
つまりこれからも、道の駅でにしんそばが食べられるし、にしん親子弁当も買えるのだ。しかし駅がなくなるということは、人の集まる場所もなくなるということ。留萌駅も天塩弥生駅のように、語り継いでいかれることを願う。
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