eスポーツ選手は「リアル世界」で通用するか? マツダのサーキット特訓で見えた驚くべき結果

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その黒沢氏が、ドイツの難コース「ニュルブルクリンク」を走行する動画を繰り返し観たり、同氏がかつて執筆したドライビングテクニック手引書をオンラインで購入して熟読したりするなどして予習してきたという。

さらに驚いたのは、講師によるつくばサーキットの攻略法解説が、一般的な初心者向けレーシングスクールと比べてハイレベルであったにもかかわらず、参加者たちが「情報量は多いが、十分に参考になった」と、しっかり理解できていた点だ。

走行後に感想を述べる参加者(写真:マツダ)

彼らは、予習と現場での各種情報、そして走行後にグラフや映像で得られたデータを頭の中で整理・解析し、次の実践に移せていたといえる。運転操作を変えると、それがクルマの動きに直結するどのパラメーターが変化するのかが、短時間で理解できたのだろう。

改めて指摘すると、彼らにとってバーチャルとリアルは“別の世界”ではなく、リアルワールドは「バーチャルに対してパラメーターの数が増えた世界」という認識だといえるのではないだろうか。

“マツダらしさ”を探す旅路

今回、MAZDA SPIRIT RACINGチャレンジプログラムの一環としてREAL CIRCUIT EXPERIENCEが実施された背景には、マツダが2022年11月に公表した「中期経営計画のアップデートと2030年に向けた経営方針」がある。

その中でマツダは、今後グローバルにおけるさまざまな規制に対して技術面で適合させたり、事業面で広島の地場企業と電動化に関する合弁事業を設立したりと、製造業者として市場環境にフレキシブルに対応していく姿勢を示した。

これと並行して、「愉しさ」や「生きる歓び」をユーザーや販売店も含むマツダに携わるすべての人と共有できる場を、積極的に設けることを強調している。こうしたマツダの姿勢や取り組みは、一般的なブランド戦略の枠を超えた、“マツダらしさ”を皆で探しに出かける旅路だといえるのではないだろうか。

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こうした“マツダらしさ”とモータースポーツには“近い関係性がある“と考えて誕生したのが、MAZDA SPIRIT RACINGだ。

カーボンニュートラルに向けた研究開発としては、2023年もスーパー耐久シリーズにフル参戦する。一方で、倶楽部MAZDA SPIRIT RACINGとして、マツダのモータースポーツ活動をより身近にユーザーに感じてもらうために、健康で安全な草の根モータースポーツ活動の活性化を掲げている。今回のeスポーツイベント成績優秀者に対するサポートも、その一環である。

次世代の自動車産業界に向けたマツダの挑戦は今、始まったばかりだ。

桃田 健史 ジャーナリスト

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ももた けんじ / Kenji Momota

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

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