eスポーツ選手は「リアル世界」で通用するか? マツダのサーキット特訓で見えた驚くべき結果

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参加者の年齢は10代後半から30代前半で、モータースポーツの経験(走行時間10時間以内)やカートの経験者もいるが、今回のようなしっかりとした内容のモータースポーツレッスンを過去に受けた人はいなかったようだ。走行の合間、参加者たちに話を聞いてみたところ、次のような声が多く聞かれた。

・景色はゲームで見慣れているので、その点は楽だ
・ブレーキの感覚が、ゲームとは違ってつかみにくい
・ゲームに比べて、ステアリング操作とクルマの動きの関係性が深い

このような指摘は、バーチャルとリアルの比較として考えれば当然のことだといえるだろう。なぜならば、バーチャルでは一般的に「G:加速度」と表現される外部からの力を身体で感じないからだ。

バーチャルの経験+リアルでの体験

リアルワールドでは、クルマ全体の動きとして水平方向の「ヨー」、左右方向の傾きである「ロール」、さらに前後方向の傾きの「ピッチ」による、3次元的な動きがGと連動する。また、クルマが走行する際に最も重要な、路面の設置部分であるタイヤについても「たわみ」などの現象は、バーチャルでは体感できない。

リアルワールドでのクルマの挙動を感じ取る(写真:マツダ)

そう考えると、バーチャルでどんなにうまく操作できていたとしても、リアルワールドでの走行でまったく歯が立たない人が多くいても不思議ではないはずだ。ところが、今回の参加者は皆一様にリアルワールドへの対応力が高いことが、走行データからも証明された。

クルマの3次元的な動きの要素やタイヤと路面との摩擦などを、新たなるパラメーター(要因)として認識し、バーチャルとリアルワールドの感覚の隙間を埋めているのだろう。

また、参加者それぞれが事前に行ったさまざまな予習を下地として、2日間で実行した結果(データによる見える化)を短時間に理解・復習することで、運転技術が上達していったようにも見えた。

バーチャルの世界を走る参加者たち(筆者撮影)

予習としては、ロードスターワンメイクレース「パーティレース」のオンボード映像をYouTubeなどで視聴したり、レース関係者や自動車評論家などによる運転テクニック解説の動画や記事、そして書籍などを参考にしたりした人が多かったようだ。

その中で驚いたのは、参加者の数人が「黒沢元治(くろさわもとはる)の説明が1番わかりやすい」と話していたことだ。黒沢氏は、1960年代の日本モータースポーツ創世期に日産でワークスドライバーを務め、国内トップドライバーとして活躍した大ベテランだ。

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