日本は洋上風力発電でもっと野心的な政策が必要 世界風力エネルギー会議幹部が語る日本の課題

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――日本では2021年に政府によって一般海域での洋上風力発電の第1次入札(第1ラウンド)が実施され、現在、第2次入札(第2ラウンド)の手続きが進められています。日本の現状をどのようにとらえていますか。

投資家や世界風力エネルギー協会の加盟企業にとって、日本は非常に魅力的な市場だ。彼らは日本政府に対して、マーケット規模をもっと拡大することに力を入れてほしいと考えている。今後、どのようなプロジェクトがどの海域でいつまでに実施されていくかといったパイプライン(案件形成)の見通しが鮮明であることを望んでいる。日本は2030年時点や2040年時点での導入目標は示しているが、今後予定されている案件の状況がわかるようなロードマップがない。

日本の案件規模は小さすぎる

――日本の第1ラウンドの入札では、秋田県および千葉県の3海域で募集された発電容量は合計で約1.7ギガワットでした。日本は2030年に向けて毎年、1ギガワットのペースで案件を形成し、2040年に30~45ギガを導入するという目標を掲げています。

日本で実施されている案件の規模はイギリスやドイツ、アメリカなどと比べても小さすぎる。案件形成について、もっと野心的になるべきだ。今後、日本国内にサプライチェーンを構築していくうえでは規模の経済を働かせなければならない。そのためには投資家にとって予見可能性が必要。加えて、基地港湾の整備も重要になる。

――海外の状況はどうでしょうか。

イギリスの最新の国際入札では、1つのラウンドにおける導入容量は12ギガワット(1200万キロワット)という非常に大きな規模になっている。かつ、さらにボリュームを拡大することも可能だ。プロジェクトの規模が大きいほど規模の経済が働き、コスト低減が可能になる。デンマークでは現在、一時中断しているが、企業側が候補サイト、候補プロジェクトを政府に提案する仕組みも導入されている。これは入札対象の枠の外で実施するもので、投資家や発電事業者にとってもメリットがある。

Rebecca Williams/世界風力エネルギー会議(GWEC)・洋上風力発電グローバルヘッド。GWEC参加以前は、リニューアブルUKに勤務し、英国の洋上風力セクターの確立に貢献。ほかにも主要な国際NGOやイギリス議会での経験も有する(撮影・尾形文繁)

――現在の主流である着床式の次には、浮体式洋上風力発電が注目されています。

ハイテク産業などの実績のある日本は特に浮体式洋上風力発電の技術において、アジア地域のみならず世界的にもリーダーになる大きなチャンスがある。日本政府が排他的経済水域(EEZ)内での開発を検討しているということは、今後のマーケット規模拡大のうえで有意義だ。東南アジア諸国、とりわけフィリピンやベトナムでは浮体式洋上風力発電の強いニーズがある。日本がそのチャンスを現実のものにするには、大規模な商業ベースの洋上風力発電をまず国内で展開し、実績を積み上げることが重要だ。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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