クレディ・スイスめぐる緊張が一気に高まった訳 本格的危機に急展開、ライバル行は影響回避急ぐ

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スイスの銀行クレディ・スイス・グループで長期にわたりくすぶっていた問題が15日、本格的な危機に急展開した。同行の株・債券価格が急落し、世界の大手銀行の一部は潜在的な影響から自行の財務を守る動きを急いだ。

クレディ・スイスの株価は一時31%下落し、上場来安値を更新。社債の指標銘柄は同行が深刻な財務ストレスを受けている状況を示唆する水準に値下がりした。一方で、同行と取引する金融機関は危機が深刻化した場合の補償となるクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の購入を急いだ。

事情に詳しい関係者1人によると、フランスの銀行BNPパリバはさらに踏み込み、クレディ・スイスがカウンターパーティーのデリバティブ契約でBNPに当事者交代を求める、いわゆるノベーションを今後は受け付けないと一部の顧客に通知した。これに加え、米国の多数の銀行が数カ月かけてクレディ・スイスへのエクスポージャーを徐々に減らしていたことも明らかになっている。

この日、世界の金融市場がこの危機に激しく揺れ動く中でスイス当局はダメージを食い止めるべく、夕方に声明を発表。クレディ・スイスに必要に応じ緊急の流動性支援を提供すると表明した。

ペン・ミューチュアル・アセット・マネジメントのマーク・ヘッペンストール社長は、「クレディ・スイスに対する信頼の危機のような取引のレベルだ」と指摘。「人々は保証を得るために可能な限りの方法を探している」と付け加えた。

この日のパニックの引き金は、クレディ・スイスの筆頭株主であるサウジ・ナショナル・バンク(SNB)のアンマル・フダリ会長の発言だった。クレディ・スイスにさらに資金を注入する意思があるかと問われた会長は「絶対にない」と答えた。同行はこのところしばらくの間そうした立場を維持しており、今回の発言は目新しいものではなかったが、ここ数日に米国の地銀3行が破綻して既に緊張状態にあった投資家を不安にさせるのに十分な内容だった。

ブルームバーグテレビジョンのインタビューに答えるサウジ・ナショナル・バンク会長Source: Bloomberg

その余波でクレディ・スイスのドル建て債は1ドル=40セントまで急落し、世界的に見ても最悪のパフォーマンスとなった。事情に詳しい関係者によると、金融機関がカウンターパーティーエクスポージャーからの短期的な防護壁を設置しようと努める中で、1年物のCDSの保証料が大幅に上昇し、それより長期の保証料と比べてかなり割高となった。

スイス当局の発表後にクレディ・スイスの米国預託証券(ADR)は下げ幅を縮小したものの、通常取引終値では依然として14%安だった。この影響は他の銀行にも及び、モルガン・スタンレーとシティグループはそれぞれ5%以上、JPモルガンとゴールドマン・サックス・グループ、ウェルズ・ファーゴはいずれも3%以上値下がりした。

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原題:Credit Suisse Erupts Into Full-Blown Crisis as Rivals Back Away(抜粋)

--取材協力:、、、、、、.

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著者:Abhinav Ramnarayan、Jennifer Surane、Katherine Doherty

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