また1996年に元信者が教団に献金の返還を求める訴訟を起こすと、幸福の科学は名誉毀損を理由に元信者と代理人の山口広弁護士を提訴。8億円もの高額な賠償金を請求した。献金返還訴訟は元信者が敗訴したが、名誉毀損訴訟については教団が敗訴。判決で威嚇目的の訴訟とされ、教団が山口弁護士への100万円の損害賠償を命じられた。
鎮静期から政治活動、活動の多角化へ
それでも1990年代後半から2000年代にかけて、幸福の科学は1990年代初頭ほどの騒ぎを起こすことはなく、その間、全国での施設建設が進む。その数は2017年までに、ウェブサイトで所在が公開されていたものだけでも500近くにのぼった。
表立った活動を再び活発化させたのは、2009年だ。同年5月に「幸福実現党」を結成した。
8月の衆院選に337人もの候補者を立てるも、大川氏自身も含め全員が落選。以後も政治活動を活発化させ、愛国、宗教立国、反共産主義、従軍慰安婦問題や南京虐殺を否定する「歴史戦」、日本の核武装、レズビアンやホモセクシャルの権利拡張反対など、宗教的・右派的な主張を展開してきた。ただし大川氏自身は、二度と立候補することはなかった。
2009年は、学校法人幸福の科学学園が設立された。翌年に栃木県に中学・高校を開校。2013年には滋賀県に関西校も開校された。2014年に大学設立の申請は文部科学省から不認可とされたが、無認可のまま「ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ」を開設し、中学・高校とともに現在も続いている。
ネット上で注目され続けてきた「霊言」
大川氏が霊を降ろして語る「霊言」は、一般向け書籍としての新作発表が1991年を最後に止まった。そして、新作発表が再開されたのは2009年。4月に『オバマ守護霊インタビュー』を刊行した。前述の幸福実現党結成の直前だ。以降、同年に『金正日守護霊の霊言』『明治天皇・昭和天皇の霊言』が発表される。
2009年以降に発刊された霊言書籍は昨年までで611冊(筆者調べ、以下同じ)。呼び出された819人の霊のうち3割を超える259人が存命人物の「守護霊」だ。次いで、宇宙人の霊で79人。神・霊・悪魔・鬼・天使が計76人。職業などの属性の内訳は、こうだ。
政治家:211人(25.8%)
宇宙人:75人(9.2%)
宗教家:65人(7.9%)
芸能人:63人(7.7%)
神:61人(7.4%)
圧倒的に政治家の霊が多く、教団の政治活動と連動していることがわかる。
幸福の科学の「実力」
霊言は、教団に批判的な人物や敵対する人物への非難にも用いられた。
その矛先になったのが、2012年に離婚が成立した、きょう子氏、離婚騒動に際して暴露記事を掲載した『週刊文春』『週刊新潮』の編集長や発行元社長、『週刊新潮』誌上で幸福の科学学園の教育実態についてリポートした筆者(藤倉善郎)、離反した元職員、幸福の科学大学を不認可とした当時の下村博文・文部科学相や大学設置・学校法人審議会メンバー、教団から離脱しYouTubeで教団批判を繰り返す、大川氏の長男・宏洋氏などである。
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