「月給●●万円以上」の求人にだまされる人の盲点 労働者を安くこき使う問題企業の正しい見分け方

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しかし、悪気のないおとり求人ほど怖いものもない。働き始めた後に「求人情報に書いてあったことと全然違うじゃないか」となった場合、大なり小なり労働紛争が起きることは避けられない。使用者も労働者も、どちらも幸せになれない結末が待っていることになる。

そのような事態に至ったときに大きくモメないために、「言った」「言ってない」「約束した」「約束してない」といった平行線をたどらぬよう、記録は絶対に残しておこう。

必ず実行しておきたいのは、求人情報そのものの保存。電子データとして手元に残すと同時に、プリントアウトもしておこう。求人情報に記載されている内容と異なる条件で働くことになった場合は、雇う側がしっかりとその旨を説明し、同意のうえで雇用契約を結ぶことが大前提だ。なんの説明もなしに契約書にサインをさせた場合、契約書に書かれている労働条件よりも当初の求人情報に書かれている内容が優先されるのが通例なので、求人情報のデータは有力な証拠となる。

「自分と誰かとの会話の録音」は問題ない

働き出した後にこっそりと労働条件を書き換える経営者もまれにいるが、この悪知恵は論外。完全に無効だ。いずれにしても、求人から採用面接までの一連の内容は、記録として残しておけば問題が発生したときに有力な証拠となる。面接の内容もできれば録音しておくといいだろう。

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「無断で録音するのはルール違反」

「証拠として扱ってもらえない」

という噂を耳にしたことがあるかもしれないが、これは第三者間の会話を録音する盗聴行為の話。「自分と誰かとの会話の録音」自体は問題ない。ハラスメントや違法行為の証拠を残す目的での録音は、実際の裁判でも証拠として扱われている。

信用が置けないうちは記録し保管する。これに限る。法令では使用者側に契約内容の理解促進の責務が課されている。求人情報や面接で誤解を招く表現を用いて採用し、理解促進の責務を果たさなかったとして、会社側から従業員へ慰謝料を支払うよう命じた判例もある。悪意に満ちた契約の結び方は罰せられるのだ。「会社に反抗してクビになったらどうしよう」と渋々悪条件の中で働き続けるのではなく、証拠を携え、労働相談センターや弁護士、個人加盟の労働組合などに相談し、反撃に出ることを強く推奨したい。

小西 秀昭 ライター
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