日本一の斬られ役・福本清三の名は遠くハリウッドまで届くようになる。2003年に公開された映画『ラスト サムライ』ではトム・クルーズと共演を果たした。役柄は、トム・クルーズ演じる主人公を見張る寡黙な侍。クライマックスの戦いでは主人公を守って銃弾に倒れる。静謐さ漂う演技と豪快な殺陣、そして見事な死に様で世界の注目を集めた。
2004年の第27回日本アカデミー賞では、協会特別賞を授与された。ある番組では、次のように話している。
──ほんでトム・クルーズともやりましたな。
福本:とんでもございません。なんかの間違いですね、あれも
──間違いと思いはったんですか。
福本:間違い。まったくですよ、僕らごときがですね、そんな。ましてやハリウッド映画に出してもらうなんて夢にも思っていなかったですからね。
──ハリウッドの映画なんてすごいじゃないですか。『ラスト サムライ』でしたか。
福本:はい。話を聞いたときは、びっくりしましたけどね。そんなことがあり得るんかなと。
ついに映画の主役のオファー
2013年、70歳になった福本のもとに、再び驚きのオファーが舞い込む。ついに映画の主役を務めることになったのだ。しかし、当初はオファーを固辞し続けた。自分は主役の器ではないと考えたからだ。
「主役というのはやっぱり、人気があって芝居ができて二枚目で、っちゅうのが三原則やろ。それでなかったら主役じゃない。僕には荷が重すぎますと」
それでも、時代劇の面白さを若い世代に伝えたいという一心で主役を引き受けた。そのときの心境を、福本は独特の表現で語っている。
「結論的には、応援してくれるみなさんに喜んでもらえるっちゅうんだったら。やっても地獄、やらんでも地獄、同じ地獄なら、やって地獄見ようかなと。そんなあれで、お引き受けしたんですけどね」