アメリカvs中国の「覇権争い」、その恐るべき未来 国内分断のアメリカ、国家主導の限界も見える中国
大西洋と太平洋という大洋に守られた天然の要塞、世界で最も恵まれた大きな島国シーパワー国家アメリカは、そもそもは内向きなのである。冷戦後の世界中の紛争への介入に懲りて、脅威が去った時を迎えて、莫大な軍事コストを抑えて、リソースをより内政にシフトしようという考えであった。
ただ、何事も白黒では割り切れない。アメリカ政府やアメリカ企業にとって戦略的に最も重要な地域であるアジアで、台頭する一方の中国だけは覇権国家として放置はできない。ソ連崩壊後、唯一の覇権国家を謳歌し、3大重要戦略拠点を中心に世界を支配したいアメリカにとって、最重要地域で台頭を続ける巨大覇権候補中国は、たたきつぶしておかねばならない敵である。
「トゥキュディデスの罠」という言葉がある。アメリカの政治学者グレアム・アリソン氏が論ずる仮説だ。古代アテナイの歴史家トゥキュディデスに由来している。同仮説によれば、「既存の覇権国家と台頭する次期覇権を狙う新興国家は衝突コースに入る」という。
実際には中国が覇権国家となるにしても、まだそうとうの時間がかかると思うが、アメリカは対中国にリソースを集中し、軍事、金融、テクノロジーなどをあらゆる手段で阻止してくるだろう。
それでも世界最高の投資家の一人、レイ・ダリオ氏は、いずれ中国がアメリカを抜いて覇権国家となるとみているのが興味深い。
国内の分断で「帝国アメリカ」は凋落するのか?
そのレイ・ダリオ氏は覇権国家の凋落の理由として、「覇権国家の内政の混乱悪化→内戦化」を挙げている。最近の同氏は、アメリカの貧富の格差の拡大や政党同士の競争を超えた憎しみ合いの激化は、アメリカ国内における内戦の始まりだという論調をメディアに披露し始めている。私が親しいアメリカの議会関係者に聞いても「これまでは民主、共和の党派に分かれても、議員同士でテニスをしたり、子どものスポーツ観戦で和気あいあいとやっていた。しかし、今はそういう姿さえ見かけないくらいお互いが距離を取っている」という。
2021年の1年だけで、アメリカ国内では銃を使った犯罪で約4万8000人がなくなっている。これはベトナム戦争全体の米軍死者数4万6000人を上回る。内戦が起こっているといっても言い過ぎではないかもしれない。
一方、中国も深刻な問題を抱える。2022年10月の第20回中国共産党大会で衝撃的な光景が世界に発信された。前リーダーの胡錦濤前国家主席が習近平氏のボディーガードに両腕を抱えられて退出させられた映像のことだ。胡錦濤氏は習近平氏の任期延長に慎重だったという。さらに激しい物言いで習近平氏の任期延長に反対していた朱鎔基元首相は共産党大会に姿を見せなかった。
習近平氏の任期延長の唯一のハードルだった胡錦濤氏や朱鎔基氏ら長老たちを抑え込み、その抑え込む姿を西側のメディアにも公開した点は興味深い。習近平氏は新しい常務委員を発表した後、「中国式現代化によって中華民族の偉大な復興を全面的に推進しなければならない」と語った。
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