イオン、「WAONと共通ID」で狙う経済圏戦略の全貌 アプリ決済も導入、小売りデータを有効活用
イオンFSの稲垣武志グループ経営企画本部長は、「ポイントを共通化すればイオングループ各店への来店動機が高まり、買い回りをしてくれて各店の売り上げがあがる。またわれわれイオンFSとしても、イオンカードの利用頻度が向上するため取扱高が増える」とポイント共通化のメリットを解説する。
とはいえ、ポイント共通化も一筋縄ではいかなかったという。そもそもポイント共通化の構想自体は10年以上前から存在した。だが、共通化し交換率がアップすればイオンFSが負担するコストが大きくなってしまうため、なかなか踏み切れなかったのだ。
当時、ときめきポイントは30%程度が交換されず、期限切れで消滅していた。それがWAON POINTを付与する形に切り替えて使用率が高まってしまうと、ポイント移管などのコストも含めて少なく見積もっても1000億円規模のコストがイオンFSに発生してしまう計算になったという。
イオンFSの荒木悟決済戦略チームリーダーは、「かなりの先行投資になるので、コストをどのようにして吸収するのか、そしてコスト以上のメリットがどれだけあるのかを示すなど、社内説得には苦労した」と明かす。
その結果、本格的な議論をスタートしてから共通化が実現するまで、実に1年余りの時間を要したという。
アプリで顧客データの一元化を目指す
苦労の末に始まったポイントの共通化だが、イオンは顧客のさらなる囲い込みを目指し、次の戦略にも乗り出している。共通アプリの開発だ。
これまではグループ各社がアプリを独自に開発し、運営していた。例えばマックスバリュ東海やイオン九州は別々のアプリを開発し、それぞれが会員IDを発行して顧客データを管理していた。そのためグループ内で顧客情報が分散し、効率的に使われていなかった。さらにイオンカードやイオン銀行の持つ顧客情報とも連携できていなかったため、顧客データはまさに宝の持ち腐れだったのだ。
そこで現在、イオンが主導する形で顧客IDの統一化とデータ活用に向けて動き始めている。2021年9月にリリースされた「iAEON(アイイオン)」は、イオングループ初の共通アプリで、イオンスタイルといった大型総合スーパーから、まいばすけっとなどの都市型ミニスーパーまで同じアプリが使えるようになった。
アプリの目玉は「AEON Pay」と名付けられた決済機能。イオンカードをアプリに登録すれば、バーコード決済として利用ができるのだ。こうすることによりカード情報と顧客IDが紐付けられ、小売りの販売データとカードデータとを掛け合わせて活用することが可能になる。
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