「不登校なんてへっちゃら」現役校長が断言する訳 学校に行かなければ勉強できないなんて思い込み

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不登校
学校に行くことそのものが大事なわけではありません(イラスト:rio/PIXTA)

学校に行かなければ国語が学べないかと言えば、そんなことはありません。彼は大好きな昆虫図鑑を読みながら、みずから学んでいったのです。

なにも、彼が特別なわけではありません。

洋楽が好きで、歌詞を丸ごと覚えて歌うことを繰り返しているうちに英語が話せるようになった人もいれば、ゲームが好きで没頭するうちにプログラミングを覚え、自分でゲームを作るようになる人だっています。

「学校に行って誰かに教えてもらわなければ勉強ができない」というのは、思い込みにすぎないのです。

だから、僕は不登校の生徒と面談するとき、必ず「いまはどんなことをやっているの?」「これからなにかやりたいことはある?」と聞くようにしています。

いま、好きなことに取り組んでいて先々にもやりたいことがあるなら、大丈夫。「学校には行かない」と決めてしまえば、たくさんの時間が手に入ります。

学校に行かない選択も尊い

その時間を使って、思う存分好きなことに取り組めばいい。スポーツをする、本を読む、会いたい人に会う、ゲームをする。ダラダラしたっていい。ダラダラした生活がイヤだと思うなら、それを変えるための方法を研究してもいい。

じつは、仮に中学3年間まるまる学校に行かなかったとしても、それだけで高校受験が不利になることはありません(推薦入試などは難しいかもしれませんが)。

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また、高校に行かなくても高認(高等学校卒業程度認定試験)を受けて、大学に入ることもできます。目指す大学、学びたい学科がはっきりあるなら、たくさんある時間を受験に向けて使っていけばいいだけです。

「学校に行かない選択をする」と決めたら、「学校生活で手に入るなにか」をあきらめたことになります。でも、その分、ほかのなにかを手に入れることができます。そしてそれは、どちらも尊いのです。

学校に行かないだけで人生が不利になることなんて、じつはほとんどありません。

不登校なんてへっちゃらなんです。

学校に行かないよりも行った方がいい理由をあえて探すとすれば、「本人が望まなくても、そこにはたくさんの人たちがいる」ことでしょうか。

工藤 勇一 横浜創英中学・高等学校校長

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くどう ゆういち / Yuichi Kudo

横浜創英中学・高等学校校長。1960年山形県生まれ。東京理科大学理学部応用数学科卒。山形県公立中学校教員、東京都公立中学校教員、東京都教育委員会、目黒区教育委員会、新宿区教育委員会教育指導課長などを経て、2014年から千代田区立麹町中学校長として宿題廃止・定期テスト廃止・固定担任制廃止などの教育改革を実行。2020年より現職。教育再生実行会議委員、内閣府 規制改革推進会議専門委員、経済産業省 産業構造審議会臨時委員など、公職を歴任。著書多数。

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