留萌本線「石狩沼田ー留萌」廃線、苦渋の決断の裏 3月末で終了、また一つ消えるJR北海道の路線

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深川方は天塩山地を遠くに望む平野部を走る。日本海側は水分が多い雪が降るのでキハ54形やキハ150形など強力型車両で運行されてきた(北秩父別ー石狩沼田間)(写真:山井美希)
鉄道ジャーナル社の協力を得て、『鉄道ジャーナル』2023年4月号「北の限界鉄路 終幕」を再構成した記事を掲載します。

深川―留萌間50.1kmを結ぶ留萌本線の廃止が決まり、まずは石狩沼田―留萌間35.7kmが今春3月31日限りで幕を閉じる(廃止日は2023年4月1日)。今回は除外された深川―石狩沼田間14.4kmも、代替バス路線の調整に期間を要するとして3年後の2026年3月末をもって廃止となる。日本海側の留萌港と道央を結ぶ重要鉄道として明治期の1910年11月23日に開通、1921年11月5日に増毛へ延びた。112年余の歴史を刻む路線に名残の乗車を試みつつ経緯や理由も改めて振り返ってみる。

車両の転配でキハ54の牙城にキハ150形

廃止が決定した留萌本線に乗車を試みたのは2023年1月中旬の平日。旭川を6時29分に出る普通で深川に向かい、乗り換えた。旭川市の郊外から長いトンネル区間を抜けると見渡す限り白い雪原が広がり、季節を変えれば豊穣の田園となる。「ライスランドふかがわ」を掲げる深川市は、その中にコンパクトな市街地を構えている。

旭川行きローカルを待つ高校生や専門学校の学生とともに駅舎内で過ごし、7時59分発の留萌行き4923Dに乗る。現在の留萌本線列車は日に7往復。2021年3月改正で朝と午後の上りおよび夜の下りの計3本が減っている。全列車とも普通だが、早朝一番の下り4921Dは途中3駅しか停まらず快速列車のようだ。しかし快速の表記はない。察するに速達を訴える列車ではなく、冬期間、途中全駅に停めると深夜の積雪を押し分けて発車することが困難となるリスクが高まるからのようで、できるだけ雪を蹴立てて突っ走れるようにしているのだ。

4923Dは留萌発4922Dの折り返しとなる。函館本線下りホームの対面に到着した列車はキハ150形の単行だった。以前はキハ54形ばかりで、この日も1両が構内に留置されていたが、2020年3月、函館本線“山線”に新型のH100形が投入されたことにより同線用だったキハ150形が苗穂から旭川運転所に転じて、ともに使用されている。キハ54形に比べると窓が大きく華奢な姿をしているが、450PS機関を搭載して2軸駆動であるなど、積雪や勾配に対応した性能を備える。ただ、スマートな姿とは裏腹に過酷な北海道の使用条件から鋼製の外板に傷みが目立つ。その点、ステンレスのキハ54形は、こと車体には衰えを感じない。

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