スズキ「いつの間にか2位」に躍進した隠れた実力 強さが功を奏したか?他メーカーが弱すぎか?

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ここまで軽自動車が増えた背景には、商品力の向上のみならず、小型/普通車を含めた日本車の値上がりがある。現在の日本車の価格を15年前と比べると、同じ車種の同等グレードで、1.2~1.4倍になっているのだ。

ファミリー層がクルマを買うときには、価格を「200万円」にイメージすることが多い。15年前なら値引きまで含めると、この200万円前後でミドルサイズミニバンの「ノア」「ヴォクシー」や「ステップワゴン」、SUVの「エクストレイル」、セダンなら「プレミオ」「アリオン」などの売れ筋グレードを購入できた。

2009年のノア。Xグレード(FF)の価格は203万7000円であった(写真:トヨタ自動車)

ところが今、ミドルサイズのミニバンやSUVは、ハイブリッド車でなくても280万~300万円だ。しかも、ミドルサイズのセダンは大半が廃止され、ほとんど残っていない。

そうなると200万円で購入できるのは、スズキ「スペーシア」、ホンダ「N-BOX」、ダイハツ「タント」のような軽自動車のスーパーハイトワゴンが主力になる。

この15年で、衝突被害軽減ブレーキなどの安全装備や運転支援機能が大幅に充実したから、これらの採用を考えると今のクルマの方が割安だともいえるが、値段が上がれば現実的に購入は困難となる。結果として、空間効率の優れた軽自動車に需要が移ったのだ。

軽自動車は納期が短い

納期の影響もある。今の小型/普通車の納期は6カ月以上が多く、1年を超える車種も少なくないが、軽自動車なら大半が6カ月以内に納車できる。1年を超える軽自動車は、「ジムニー」など一部の車種だけだ。

そのため軽自動車は、小型/普通車と比べると届け出が順調に進み、販売比率を安定的に高めることができた。特にスズキは、軽自動車の販売比率がダイハツの次に高いから、納期では有利。コロナ禍においても、届け出台数をあまり減らしていない。

ダイハツは、小型/普通車を大量に扱うトヨタの傘下にあるから、小型車の国内販売比率が約6%と低い。その点でスズキは、小型車の「ソリオ」や「スイフト」も相応に人気を高め、小型車の国内販売比率が17%に達する。

欧州的なデザインや走りにも定評があるスイフト(写真:スズキ)

軽自動車だけに依存せず、小型車で売れ行きを伸ばしたことも、スズキの国内販売台数がトヨタに次ぐ2位になった理由なのだ。軽自動車と小型車の販売バランスが優れている。

そして、スズキの人気を根底で支えるのは、日本のユーザーのメリットを追求するクルマ造りだ。軽自動車と小型車を中心とするスズキは、以前から軽量化に力を入れている。

今は安全装備の充実もあり、5ナンバーサイズのコンパクトカーでも車両重量が1トンを超える車種が多いが、スイフトの2WDは大半が860~900kgに収まっており軽い。1.4リッターターボを搭載する「スイフトスポーツ」でも1トン以下だ。

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