新型アルト「10年ぶり快挙」も微妙と言えるワケ 発売1年で販売「6.7万台」が表す軽セダンの今
2022年上半期の販売は、3万3770台で前年比92.9%。コロナ禍による生産遅延の影響も少なくないが、モデルチェンジ後にもかかわらず、前年の成績をクリアできない苦戦ぶりだった。
しかし、夏を過ぎ、秋になると販売は上向きになる。2022年1~12月の年間販売では6万7204台、前年比110.3%を達成。目標の6000台×12カ月=7万2000台はクリアできなかったが、前年を上回る数字を残すことができた。
先代には届かなくとも10年ぶり前年比プラス
とはいえ、「年間6万7204台、前年比110.3%」という数字は正直、微妙なものだ。プラスとマイナスの両方の見方ができるからだ。
プラス視点で見れば、「前年比プラスは10年ぶりの快挙」である。実のところ、アルトの販売は2013年から9年連続で前年比マイナスを続けていた。前年比プラスとなったのは、10年前となる2012年以来となるのだ。
驚くのは、2014年12月にアルトはフルモデルチェンジをしている。その先代モデルは、最初の年から販売数が前年の旧型に届かず、毎年のように販売台数を減らしていた。そうした「マイナスをストップさせた」という意味では、新型アルトは大きな手柄を挙げたと言える。
しかし、マイナスの見方をすれば、発売直後なのに「年間で約6万7000台しか売れていない」のだ。
2014年12月にフルモデルチェンジした先代の8代目モデルは、2015年に10万9355台を売っている。その前の7代目モデルは、デビュー翌年の2010年に10万6709台を販売した。どちらも10万台を超えている。台数だけを見ると、新型アルトの数字は正直、物足りないと言えるだろう。
新型アルトのふがいない数字は、クルマの内容というよりも国内市場のニーズの変化に、その理由がある。ライバルであるダイハツ「ミライース」の販売状況を見ても、それは明らかだ。
ミライースの販売台数も、アルトとそう変わらない。1990年代初頭まで、軽自動車の売れ筋は、アルトのような背の低いセダンタイプであった。しかし、1993年にスズキ「ワゴンR」、1995年にダイハツ「ムーヴ」が登場すると、背の高いいわゆるハイトワゴンが“もっとも売れる軽自動車”になる。
そして、2011年にホンダから「N-BOX」が登場すると、さらに背が高く、左右にスライドドアを持つ、スーパーハイトワゴンが花形となった。そのため、アルトのような背の低いモデルはベストセラーの座から遠ざかることになってしまったのだ。
ハイトワゴンの台頭によりセダンタイプの販売は減少し、スーパーハイトワゴンの登場によりさらにその傾向が強まった。その結果が、アルトやミライースの現状なのである。
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