新型アルト「10年ぶり快挙」も微妙と言えるワケ 発売1年で販売「6.7万台」が表す軽セダンの今

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しかし、だからといってアルトが役割を終えたわけではない。必要十分な室内の広さと積載性能と、軽量で空力特性にも優れるゆえの燃費性能、そして100万円を切るモデルを用意する低価格。

実用的で価格が安く、コストパフォーマンスも高いモデルは、いつの時代もニーズが消えることはない。かつての華やかさは失ったものの、なくてはならないたしかな存在感を持つモデルと言えるだろう。

新たな市場での活躍を期待

1月下旬、スズキは「2030年度に向けた成長戦略」を発表した。注目を集めたのは、2030年度までに日本で6モデル、ヨーロッパで5モデル、インドで6モデルものBEVを投入するという発表であった。

どのモデルとの明言はなかったものの、プレゼンで示されたシルエットから、6モデル中4モデルが軽自動車であることが予想できる。そのうちの1つが、背の低い軽自動車のシルエットであった。つまり、アルトに相当するモデルだ。もしかすると、次世代のアルトはBEV化するのかもしれない。

2023年にインドで初公開されたEVコンセプトモデル「eVX」(写真:スズキ)

また、もう1つの驚きは、2030年度の売り上げ目標だ。スズキの2021年度の売上は3.5兆円であったが、2030年度には7兆円を目指すという。なんと2倍という大きな目標だ。

この大きな目標を実現するには、人口規模が縮小していく日本とヨーロッパでどれだけ頑張ったとしても不可能だろう。しかし、スズキにはシェア43.3%を誇るインド市場がある。

さらには、スズキはエチオピア、コートジボワール、ジブチ、アンゴラというアフリカの国でも、4輪車のシェアがナンバー1となっている。インドとアフリカという、人口増エリアでの成長をスズキは狙っているのだ。

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ちなみに、2022年8月にはインドでも新型アルトを投入している。これは1リッターエンジンを搭載しており、デザインも日本のアルトとは別物だ。しかし、アルトという名称を持ち、エントリー向けであるという性格付けは同じだ。

スズキにとってエントリーモデルは、やはりアルトなのであろう。そうとなれば、アフリカ向けのアルトも生まれるかもしれない。日本だけでなく世界で愛されるクルマ。それがアルトなのだ。

鈴木 ケンイチ モータージャーナリスト 

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すずき けんいち / Kenichi Suzuki

1966年生まれ。茨城県出身。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。レース経験あり。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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