パナが500億投資で狙う「省エネ暖房」の巨大市場 爆売れ「ヒートポンプ」でダイキンを抜けるか
ウクライナ戦争前から高い伸び
――ヨーロッパでヒートポンプ式暖房の需要が高まっています。ウクライナ戦争を引き金とするエネルギー危機の影響でしょうか。
ウクライナ戦争は需要を加速させた1つの要因ではあるが、実はそれ以前から高い需要が続いてきた。
ヨーロッパ全体でCO2の排出量を抑制していこうという機運が高まる中、各国は補助金や税還付という方法でヒートポンプ式暖房の購入支援策を打ち出している。こうした施策の効果が顕在化してきたのが2021年から2022年にかけてのことだ。さらに戦争が勃発したことで、「ロシアの天然ガスに頼らない暖房」として脚光を浴びた側面もある。
光熱費の高騰は、足元でヨーロッパの家計を直撃している。国によって異なるものの、うちの駐在員の話を聞くと従来の5倍、6倍に上がったという声は珍しくない。
とくに高いのはガス代だが、かといって政府として「ガスの使用量を一気に減らして電気に移行しよう」というのも無理な話だ。だからヒートポンプなどの省エネ機器を普及させることで、エネルギー消費の総量を減らさないとまかないきれない状況になっている。
ヒートポンプはどの程度省エネになるのかというと、1のエネルギーに対して4〜5の暖房効果を生み出せる。対してヨーロッパで一般的なのは化石燃料を燃やすボイラー式の暖房で、1に対して1の暖房効果しか得られない。
こうした複合的な要因により、60万台ほどだった2021年のヒートポンプ式暖房の販売台数は、2022年に150%ほど伸びた。これが、2030年になると10倍の600万台にまで拡大する、という市場予測もある。
――逆に、これまでヒートポンプ式暖房が普及してこなかったのは何がボトルネックになっていたのですか。パナソニックがヨーロッパで販売を始めたのは、2008年と少し前のことです。
需要が上がってきたのは2020年代に入ってからで、ボトルネックとなっていたのは高い初期費用だ。設置工事費用を含めれば日本円にして3桁(万円)はいく。いくら環境に優しいとはいえ、経済合理性の点でなかなかニーズが高まらなかった。
ただそれが、ヨーロッパ各国が購入支援策を打ち出したことで費用が半分かそれ以下になる国も出てきて、一気に導入の機運が高まった。
――いっときのブームではないのでしょうか。
ヨーロッパが脱炭素に向かっていくのは中長期での流れであって、燃焼式の暖房からヒートポンプ式への転換は今後も進むだろう。
さらに空調というのは設備商品だ。(単品売り切り型の)家電ではないから、一度購入していただければメンテナンスや設備更新が必要になり、非常に息の長いビジネスへとつながる。
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