パナが500億投資で狙う「省エネ暖房」の巨大市場 爆売れ「ヒートポンプ」でダイキンを抜けるか

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パナソニックが展開するヒートポンプ式暖房。ヒートポンプは空気中の熱をくみ上げるため一般的に寒冷地に弱いが、空質空調事業を統括する道浦正治社長は「寒冷地での性能は他社より頭1つ抜けていると自負」する(写真:パナソニック)
2月13日(月)発売の『週刊東洋経済』では、「どうするエネルギー危機 どうなる脱炭素」を特集。あらゆるエネルギー価格が高騰し続ける中、経済成長を維持しながら脱炭素をどう両立させるか。そして、エネルギー安全保障をどう確保するのか。難しい課題に直面する日本と世界の最前線を追っている。
エネルギー危機による光熱費高騰にあえぐヨーロッパで「省エネ製品」として急激にニーズが高まっているのが、日本企業が市場で先行するヒートポンプ式の温水暖房機だ。
ヒートポンプとは、空気中にある熱を集めて室内に運ぶ技術のこと。この技術を活用した暖房機器が、ヨーロッパで一般的な「燃焼式暖房」よりも二酸化炭素(CO2)の排出量が低く光熱費も抑えられると、脚光を浴びているのだ(詳細は「ダイキン、パナの『暖房』が救うエネルギー危機」)。
ヨーロッパにおけるヒートポンプ式暖房のシェアトップはダイキン工業だが、それを追うのがパナソニックホールディングス(HD)。3つの成長領域の1つに位置づける「空質空調」事業の成長の牽引役として、積極的に投資を振り向ける構えだ。
他社も投資を積極化する中、いかに優位性を発揮していくことができるのか。パナソニック空質空調社の道浦正治社長に聞いた。

ウクライナ戦争前から高い伸び

――ヨーロッパでヒートポンプ式暖房の需要が高まっています。ウクライナ戦争を引き金とするエネルギー危機の影響でしょうか。

ウクライナ戦争は需要を加速させた1つの要因ではあるが、実はそれ以前から高い需要が続いてきた。

週刊東洋経済 2023年2/18号[雑誌](どうするエネルギー危機 どうなる脱炭素)
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ヨーロッパ全体でCO2の排出量を抑制していこうという機運が高まる中、各国は補助金や税還付という方法でヒートポンプ式暖房の購入支援策を打ち出している。こうした施策の効果が顕在化してきたのが2021年から2022年にかけてのことだ。さらに戦争が勃発したことで、「ロシアの天然ガスに頼らない暖房」として脚光を浴びた側面もある。

光熱費の高騰は、足元でヨーロッパの家計を直撃している。国によって異なるものの、うちの駐在員の話を聞くと従来の5倍、6倍に上がったという声は珍しくない。

とくに高いのはガス代だが、かといって政府として「ガスの使用量を一気に減らして電気に移行しよう」というのも無理な話だ。だからヒートポンプなどの省エネ機器を普及させることで、エネルギー消費の総量を減らさないとまかないきれない状況になっている。

ヒートポンプはどの程度省エネになるのかというと、1のエネルギーに対して4〜5の暖房効果を生み出せる。対してヨーロッパで一般的なのは化石燃料を燃やすボイラー式の暖房で、1に対して1の暖房効果しか得られない。

こうした複合的な要因により、60万台ほどだった2021年のヒートポンプ式暖房の販売台数は、2022年に150%ほど伸びた。これが、2030年になると10倍の600万台にまで拡大する、という市場予測もある。

――逆に、これまでヒートポンプ式暖房が普及してこなかったのは何がボトルネックになっていたのですか。パナソニックがヨーロッパで販売を始めたのは、2008年と少し前のことです。

需要が上がってきたのは2020年代に入ってからで、ボトルネックとなっていたのは高い初期費用だ。設置工事費用を含めれば日本円にして3桁(万円)はいく。いくら環境に優しいとはいえ、経済合理性の点でなかなかニーズが高まらなかった。

ただそれが、ヨーロッパ各国が購入支援策を打ち出したことで費用が半分かそれ以下になる国も出てきて、一気に導入の機運が高まった。

――いっときのブームではないのでしょうか。

ヨーロッパが脱炭素に向かっていくのは中長期での流れであって、燃焼式の暖房からヒートポンプ式への転換は今後も進むだろう。

さらに空調というのは設備商品だ。(単品売り切り型の)家電ではないから、一度購入していただければメンテナンスや設備更新が必要になり、非常に息の長いビジネスへとつながる。

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