パナが500億投資で狙う「省エネ暖房」の巨大市場 爆売れ「ヒートポンプ」でダイキンを抜けるか

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――昨年には2025年までに500億円を投じて、生産、研究開発、マーケティングなどを強化すると発表しました。

うちに限った話ではないが、現状では需要に生産が追いついておらずバックオーダーをたくさん抱えている状態だ。

チェコ工場ではもともとテレビを生産していたが、ラインを入れ替えてヒートポンプ用にする(写真:パナソニック)。

今はマレーシアの工場がメインの生産拠点だが、今後は市場が加速度的に大きくなるとみて、チェコ工場も増強する方向でアクセルを踏んでいる。

チェコ工場の場合はこれまでテレビを作っていた生産ラインを入れ替えるので、2つの工場への増産投資だけでも300億円ほどはかかると見ている。ここに必要な装置をどんどん足していき、最終的にはかなり大きな投資になるだろう。

――ヒートポンプ全体への投資額は500億円が上限ではない?

走りながらにはなるが、必要であれば追加投資も積極的に検討していきたい。

何しろ、立ち上がるのは巨大な市場だ。今の当社は(市場シェア)トップ3には入っているが、これからは市場の成長率以上に伸ばして、ナンバー1、2を狙っていきたい。この立ち位置を確保するためには、市場の動きとしっかり同期させながらスピードをもって仕掛けていくことが大切だ。

ヒートポンプ式暖房を手掛ける空質空調社全体では、2025年までに売上高1兆円(2021年度は約7000億円)を目指すが、その中でもヨーロッパ市場の伸びが全体を牽引するという立て付けだ。売上高全体の2割くらいを占めるまでの規模にはしないといけない。

――ダイキンや三菱電機、ヨーロッパ勢なども投資拡大や市場参入を発表しています。

ヨーロッパの現地メーカーも、今からぐんと来るだろう。今はまず、業界をあげてヒートポンプ式暖房の普及に向けて進んでいくことが重要だ。

その中で願わくは、当社がリーダー的なポジションを確立しながら市場を再構築していくところまで取り組んでいきたい。

空調の「心臓部」に歴史的変化

――どのように「再構築」しますか。

今後のポイントの1つとなるのが、ヒートポンプにも用いられる「冷媒」の変化だ。これまで当たり前に使ってきた冷媒(代替フロンの一種であるHFC)は温暖化への影響がある。向こう10年くらいで環境に優しいタイプに変えていかなくてはいけない。

2016年のモントリオール議定書では、先進国は2036年までにHFCを85%減らしていくことになった。冷媒を変えるということは、空調機器にとっての「心臓部」を変えることにほかならない。空調市場において、何十年かに1度の大変革だ。

そこで当社では、今年5月には日系メーカーとして初めて自然冷媒を用いた新製品を3種発売する。2025年には、ラインナップを2倍以上に拡充していく計画だ。

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