ついに試走開始、フランス「新型TGV」成功する条件 実験線で耐久走行、2024年冬の営業運転目指す

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アルストムは、3億4000万ユーロ(約487億円)を投じてアヴェリア・ホライズンを開発。乗客の快適性と環境性能を向上させながらも、鉄道会社の総所有コスト(Total Cost of Ownership、TCO)を削減することに主眼を置いて設計した。

例えば従来型のユーロ・デュプレックスと比較して、座席あたりのTCOを30%削減し、逆に乗車定員を20%増加させることに成功している。機器類のうち、バー車両の階下部分に搭載していた補機類は、小型化のうえ機関車へ移設することに成功、この部分へも座席を設けることに成功している。

前面形状はAGVに似た、空気抵抗を軽減させるデザインを採用し、台車やパンタグラフ、車体側面も極力平滑化させることで空力性能を向上。各機器の軽量化などを合わせ、エネルギー消費量を20%も低減させた。動力装置にはTGVデュプレックスと同じ非同期式電動機を採用、定格出力は現行の最新型であるユーロ・デュプレックスの9280kWに対し8000kWと1280kWも低くなっているが、車体の軽量化や空力性能などその他の部分で磨きをかけ、トータルで同等以上の性能を発揮する。

フランス以外の受注を獲得できるか?

アヴェリア・ホライズンは、現時点ではSNCFと115編成分の受注を含む、最大200編成分の契約に合意する可能性があるが、他の事業者との契約には至っていない。

フランス国内向けとしては、老朽化したTGV-AとTGV-Rの2車種の代替用に加え、増発用としても需要が見込まれる。数年後には、製造後30年を迎える初期のTGVデュプレックスも置き換えの対象となるはずで、フランス国内需要だけでも当面は安泰ともいえる。

一方で、SNCF以外の運行会社が興味を示し、契約を獲得できるかという点は気になるところだ。アヴェリア・ホライズンや、輸出の可能性を視野に入れた新型高速列車を製造するため、アルストムは同社ラ・ロシェル工場に5000万ユーロ(約71億円)を投資して新たな生産ラインを建設したが、この巨額投資を正当化するためにはさらなる受注獲得が必要といえるだろう。

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橋爪 智之 欧州鉄道フォトライター

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はしづめ ともゆき / Tomoyuki Hashizume

1973年東京都生まれ。日本旅行作家協会 (JTWO)会員。主な寄稿先はダイヤモンド・ビッグ社、鉄道ジャーナル社(連載中)など。現在はチェコ共和国プラハ在住。

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