少子化など大学経営に逆風が吹き続くなか、利益を確保している大学にはどのような傾向があるのか。
文部科学省は2019年度から経営困難な私立大学の指導を強化している。経営難に陥る私大に対し助言など経営指導を3年程度行い、経営改善が進まなかった場合は法人の解散などを求めるという。
指導の対象になるのは貸借対照表の運用資産(現預金、特定資産、有価証券の合計)が、外部負債(長短借入金、学校債、手形、未払金の合計)を下回っている、経常収支差額が3年連続でマイナスになっているなどの指標に当てはまる大学だ。
経常収支差額とは、「教育活動収支差額」(授業料などを含む学生生徒等納付金などの教育活動収入から、研究経費や人件費などの教育活動支出を引いた額)と、利息や配当、利払いといった教育活動以外の収支を示す「教育活動外収支差額」(教育活動外収入−教育活動外支出)の合計値となる。
経常収支差額で大学経営の安定性を見る
企業の経常利益に相当する数字で、経常的な大学運営の収支状況、利益がわかる。マイナスが続いているということは、大学運営になにかしらの問題があるということになる。
少子化やコロナ禍などで大学の経営に逆風が続いている。東洋経済では、各大学法人(短大や大学院大学を含む)の財務状況をまとめた「私立大学財政データ」を作成している。財務状況を確認できる665法人の2021年度のデータを見ると、経常収支差額ベースで約4割の254校は赤字に陥っている。
私大の収入の柱は学生が払う入学金や授業料などで、入学者数が減少するほど経営は厳しくなる。日本私立学校振興・共済事業団によると、2021年度に定員割れを起こした私立大学は前年から93校増の277校にも及んだ。集計対象の597校のうち約5割が定員割れとなっている。
経常収支差額のマイナスが続いている学校法人も多い一方で、しっかりと利益を確保している学校法人も多い。経常収支差額が恒常的にプラスであることが、イコール、大学経営が経常的に安定しているということを示す。
そこで今回、2021年度(2022年3月期)の経常収支差額が多い学校法人を順にならべ、「利益を確保している私立大学ランキング」を作成した。
2021年度の経常収入、2020年度の経常収支差額に加えて、収支のバランスを見る指標として、経常収入にしめる経常収支差額の割合である「経常収支差額比率」も合わせて記載した。
ただ、大学を運営する学校法人は株式会社のように利益の追求が目的ではなく、教育や研究の充実が求められる。つまり、この比率が高ければ正解というわけでもない。黒字を確保しながら、教育や研究に十分に投資をしているかが重要だ。あくまで経営の安定性を測る一指標としてランキングをみてもらいたい。
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