セブン、コンビニ絶好調でも1%増益のナゼ 2015年度は営業利益8.6%増を計画

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セブン&アイの村田社長。イトーヨーカ堂には厳しい”注文”をつけた

イトーヨーカ堂は2015年度、営業利益で100億円(前期は18億円)をもくろむ。「1兆円売っている企業で、利益がこれだけでは情けない」と、2日の決算会見でセブン&アイの村田紀敏社長が苦笑したように、それでも決して満足な数値ではない。だが、まずは利益回復を図る必要がある。

セブン&アイでは昨年の春頃から、「地域性」をキーワードにした商品開発に力を入れている。従来の「本部が商品を考え、現場でそれを売る」という画一的な品ぞろえではなく、その地域に慣れ親しまれた商品をそろえ、プライベートブランド(PB)商品の味付けも変えるといった具合だ。

村田社長は会見の中でイトーヨーカ堂に対しても「“個店主義”の徹底が必要。各店の収益の責任は各店舗にある。必要なものがあれば店側から要望を出せと言っている。それをサポートするのが本部という位置づけ。これくらいしないと、変わらない」と力説した。

社長自らが衣料事業をテコ入れ

消費の二極化が明確になる中、「イトーヨーカ堂だから1900円、2900円の(安い)商品が当たり前と思って開発していては、レベルの低いものしか出てこない」(村田社長)と、いかに品質の高いものをそろえられるかも重要になる。特に、昨年苦戦した衣料品に関しては、2015年1月からはイトーヨーカ堂の戸井和久社長が自ら衣料事業部長を兼務するという異例の人事で、テコ入れを急いでいる。

コーヒーに加えてドーナツも導入するコンビニは”進化”を続ける

赤字に苦しむニッセンはいかにその額を減らせるかだ。2015年度のグループ全体の通信販売事業は59億円の営業赤字(前期75億円)見通し。セブンやイトーヨーカ堂と同じく、品質を追求した商品開発に力を入れる。トップ交代で昨年末から指揮を執る市場信行社長は、リストラも辞さない構えだが、依然として”傷口“は深い。

 国内のコンビニは2014年度をさらに上回る1700の出店を計画。巧みな商品戦略で既存店のプラスを維持し、これまでコーヒーやドーナツといった新たな需要を掘り起こす開発力が業績を牽引してきた。とはいえ、今年度に予定する8.6%の増益は”優等生”の頑張りだけでは達成できない。イトーヨーカ堂をはじめ、停滞気味の百貨店そごう・西武や、ニッセンなど、ほかの事業の奮闘が最高益更新のカギを握っている。

田野 真由佳 東洋経済 記者

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たの まゆか / Mayuka Tano

2009年に大学を卒業後、時事通信社を経て東洋経済新報社に入社。小売りや食品業界を担当し、現在は会社四季報編集部に所属。幼児を育てながら時短勤務中。

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