政治の弛緩はひとえに野党の非力、無気力のゆえ。野党には「政権交代が日本を救う」という志が必要だ。
通常国会が始まった。この国会には、重大な争点が目白押しである。
岸田文雄首相は、安全保障政策の転換について「歴史的」と表現した。そして新年早々欧米諸国を歴訪し、自らの新しい安全保障政策について説明し、各国首脳の支持を得たと述べている。首脳会談でどのような話があったのかを首相は国会に説明すべきだ。しかし、政務秘書官を務める首相の息子が観光や買い物をしていたという週刊誌報道を受け、公私混同をめぐる追及に予算委員会の審議時間が費やされた。首相の不見識は、情けない限りだ。
新安保政策については多くの論点がある。今までほとんど議論されてこなかったのは、最も基本的な前提、すなわち、どのような歴史観と文明論に基づいて日本を国際社会の中に位置づけるかという問いである。中国を単なる仮想敵と見なし、これに対抗するために西側の一員として、より大きな軍事的役割を担うだけでよいのか、視野の広い議論が必要である。
歴史家の故坂野潤治氏は、晩年、政治学者たる者、つねに日中友好を唱えなければならないとしばしば私に語った。習近平体制の中国と親密になるのは無理だろう。それでも日清戦争から日中戦争に至るまで、日本が中国を踏み台にして大国化を進めた歴史について自覚しなければならないという坂野氏の遺言は今こそ聞くべきだ。また、気候変動危機、人口減少局面における経済・社会の持続可能性の確保などの人類史的課題について、日中両国が協力することは世界の未来にとっても必要である。
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