中国人エリートたちが語る「日本移住」選んだ真因 日本が高度人材を増やすのに欠けている視点は

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何も求めない「寝そべり族」と呼ばれる中国の若者が増えていると、日本のメディアにも取り上げられているが、ここであえて残酷な事実を言うと、「寝そべり族」になれる人は、「何も求めていない」かもしれないが、「何でも持っている」人に限られている。

何でも持っているというのは、例えば資産、経済的に困らない配偶者、そこそこの仕事、教養などで、Bさんもこうした環境に身を置いているからこそ、競争から避ける方法を選ぶことができるのだ。

毎日子供の世話と指導に追われ…

Bさんが日本に来た理由は、中国では過剰に競争しないと生きていけない、子供も大人も共倒れになるからだという。中国の教育への熱意と激しさは世界トップだと言われる。今どきの中国の小学生は平日8時から22時は勉強と習い事(夕飯と休憩時間を合わせて1時間ほど)に費やし、週末も4、5つの習い事を掛け持ちするなど、大人よりも多忙な日々を送っている。

Bさんは子供にそこまでプレッシャーをかけたくなく、習い事をピアノ1つだけにしていたが、それでも、自分も両家の両親も休みなく、毎日子供の世話と指導に追われ、疲れ切ったようである。

それでも、息子のクラスメートの中では楽なほうのようで、学校の先生にもよく「こんなに楽にさせたら損するのはお宅の息子だよ」と注意されていた。競争とストレスのあまりに、うつ病になるクラスメートは1人や2人ではないし、何より大人は持続可能な育児ができなくなっていると痛感している。

勉強と受験だけではなく、子供と一緒に普通の生活を楽しみたくなり、たまたま夫の駐在先が日本だったので、自分も仕事を辞めて日本に来ることにした。

「仕事を辞めて後悔しないの? 羨ましいと思う人がたくさんいる仕事だよ」と尋ねると、「久しぶりに息子と『楽しい!』時間が戻ってきたのが何よりの価値」と答えた。「上海にいるとき、金曜日の夜30分だけゲームをさせていたが、今は週末親子3人で一緒にやることがかけがえのない時間になっている」ととても満足げの笑顔を見せる。

「日本に来てから、任天堂のグッズを日本人親子が一緒に買うことにビックリ。中国だと勉強以外のことに時間をかけることは滅多にないし、そんなことをしたら周りに怒られるのが当たり前だった。今までの生活は本当に緊張感が高すぎた」と話す。

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