「こんなに違う」日本と台湾、男女の立場と力関係 夫婦が離婚すると住宅はほぼ自動的に妻のもの

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台湾では男女平等がかなり浸透していますが、冷静に観察してみると、社会的にはかなり女性優位ではないかと思う光景にしばしば出くわします。日本にも「かかあ天下」という言葉がありますが、台湾の場合は名実共に女性のほうが強い社会と言っていいでしょう。

1つの例として、住宅購入の際の習慣があります。日本では家やマンションを買うと、夫名義か夫婦名義にするケースが一般的です。ところが台湾では、名義は妻のものとすることが圧倒的に多いです。その理由は、住宅は男が妻に残すものという感覚があるからです。

この場合、仮に夫婦が離婚すると住宅はほぼ自動的に妻のものになるため、男性は不利な立場に追い込まれます。住宅以外の不動産を購入する際も、妻の名義にするのが通例です。節税対策を考えている夫婦もいるのかもしれませんが、だとしても不動産に関しては妻側に有利な条件を与えるケースが台湾ではとても多いように感じます。

そのほかの場面においても、台湾では女性や妻の意見が尊重される文化が根付いているのは間違いありません。これらはすべて、妻への愛情の証として捉えられています。

台湾男性は“マザコン気質”?

家族にも目を向けてみましょう。台湾の家族で特徴的なのは、子どもたちが親を大事にすることです。特に母親を慕っている男性は多く、日本人から見ると台湾男性は“マザコン気質”が強いと感じるかもしれません。台湾では誰もが知る男性歌手、ジェイ・チョウにも「聽媽媽的話(ママの話をきいて)」という有名な曲があるくらいです。

男性が進路や就職で悩んだとき、母親の意見を頼りにする人はたくさんいます。

「母が反対したので、この学校に行くのはやめます」

「母が『台湾に帰って来い』というので、日本で就職するのはあきらめます」

日本人の感覚からすると唖然としてしまうようなセリフが出てくるのです。「母の意思」に頼って決断することにうしろめたさを感じる人は少なく、成人男性であっても「母の考え」に耳を傾けて転職したり、仕事を辞めたりします。

たまに「両親が……」とか「父が……」と言う男性もいるようですが、ほとんどの人が「母が……」という言葉を口にすると言っていいでしょう。女性のなかには「父が……」と言う人もいますが、私が実際に見聞きした限りでは「母が……」と言う男性のほうが圧倒的に多数派です。これがいいか悪いかは別にして、台湾の家庭ではこれほどまでに母の地位は高いのです。

私の会社で働いていた台湾人スタッフも母親を大切に思い、LINEでこまめに連絡するだけでなく、毎月仕送りをしていました。

旧正月になると、どんなに時間やお金がかかっても台湾の人たちは必ず帰省します。台湾のことわざに「世上只有媽媽好(世界で一番素晴らしいのは母である)」や「成功男人的背後都有一個偉大的女人(成功する男性のうしろには偉大な女性あり)」というものがあるように、家庭においても「母」や「妻」である女性はとても大切にされているのです。

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