操業停止相次ぐ鹿島臨海工業地帯、車・家電など川下への影響甚大【地図で見る震災被害】
石油化学プラントは、石油から取り出されるナフサ(粗製ガソリン)を基にエチレンやプロピレン、B−B留分など石油化学製品の基礎原料をつくる。石油化学コンビナートでは、パイプラインや陸上、船上輸送を通じてこれらの基礎原料が化成品メーカーに渡り、合成樹脂や合成ゴム、合成樹脂原料、界面活性剤などの石油化学誘導品となる。
鹿島コンビナートの場合は、旭硝子、JSR、信越化学工業、カネカ、クラレ、三井化学、三菱ガス化学など20数社の誘導品メーカーがパイプラインで連なっている。各社間に明確な資本関係はなく、緩やかな企業連携を形成しているが、言い換えればこれは“一蓮托生”。三菱化学の鹿島事業所が始動できない以上は、これらの誘導品メーカーもそろって生産停止を強いられる可能性が高い。実際、これらのメーカーからは「鹿島工場は操業再開の見込みがまるで立っていない」との声が聞かれる。
一例を挙げれば、紙パルプの漂白や工業用薬品などに使う過酸化水素を鹿島工場で生産する三菱ガス化学への影響は大きそうだ。三菱ガス化学は、三重・四日市(年産能力1.8万トン)や北海道の合弁会社(3.3万トン、50%を出資)でも過酸化水素をつくっているが、鹿島の生産能力は年10.4万トンとこの中で最も大きい。
問題は鹿島コンビナートの外にも広がる。誘導品メーカーはプラスチック加工や繊維、ゴム、塗料などさらに川下のメーカーに化学品を供給。それらが部材として自動車や家電製品、日用品、衣料などに使われて、最終的に消費者に渡る構図となっている。
そのサプライチェーンの全容をつかむことは不可能に近いものの、東日本を中心として複雑に張り巡らされていることは想像に難くない。源流である石化プラントの長期停止は、直接的には関係が薄いとみられる企業や産業に、思わぬ格好で悪影響を及ぼす懸念がある。
鹿島コンビナートのエチレン換算の生産能力は約80万トンと日本全体の1割強を占める。首都圏や中部、西日本などの他のコンビナートが機能を代替するという策も考えられるが、最終消費製品をつくるメーカーが、直ちにサプライチェーンを組み直すのは至難の業。川下産業への打撃が長引く可能性も否定できない。
(武政 秀明=東洋経済オンライン)
■地域の経済力
・神栖市
民営事業所数 4154事業所(全国270位)
製造品出荷額等 2兆1210億円(同19位)
製造品出荷額上位業種と構成比
1位 化学 48.5%
2位 食料 10.5%
3位 飲料 5.3%
・鹿嶋市
民営事業所数 2333事業所(同502位)
製造品出荷額等 8800億円(同79位)
製造品出荷額上位業種と構成比
1位 鉄鋼 85.5%
2位 機械 4.2%
3位 窯業 1.8%
(出所・都市データパック2010年版)
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