東急と新潟県が協定、「豪華列車」相互運転も実現? 防災や物資輸送で「包括連携」鉄道は含むのか
では、雪月花を運行するえちごトキめき鉄道自身は東急との連携についてどう考えているのだろうか。
同社の鳥塚亮社長は、2021年7月に東洋経済オンラインの取材に対して、雪月花をオフシーズンに他社に貸し出すというアイデアを披露している。「九州で桜が満開になっても、こっちはまだ暇。だったら、桜前線に合わせて、九州、中国、本州、東北という順に雪月花を走らせたら面白いよね。逆に紅葉の季節には、東北から始まって、関東で走らせて、最後は京都とかね」(2021年8月9日付記事「縄張り越えた『観光列車レンタル』新潮流になるか」)。
そこで包括連携協定の取材後に早速、鳥塚社長を直撃してみた。すると、雪月花の他県への貸し出しについて「現在具体的検討に入っている」(もちろん東急ではない)という。相手がある話であり、どの鉄道と組むか、どこを走るかといった詳細は明かせないというが、楽しみな話だ。さらに、「このほかにも他路線へ持って行くことができないか検討を始めている」という。
東急との連携についてはどうか。この点について、鳥塚社長は、「時期的には冬期間はこちらのオフシーズンになる。1~2月は伊豆の春先取りのシーズンでもあるので、オフシーズンの車両の貸し出しという点ではぴったり」として、連携はありうるという考えを示した。ただ、「雪月花を伊豆急の路線まで持ち込むにはJR貨物に輸送してもらうことになる」という。
鉄道を活用した「魅力」発信を
花角知事の「面白い」という発言が本気なのか、単なるリップサービスにすぎないのかはわからないが、鉄道には多くの人を引きつける魅力があることだけは間違いない。今回の包括連携協定は取材した報道陣の数も記事になった本数も決して多くないが、もし、発表内容に鉄道が関係していたらもっと多くの報道陣が詰めかけ、その内容は多くのメディアを賑わしたはずだ。
花角知事は、「新潟県の魅力に関する情報を効果的に発信しないといけない」と話しており、情報発信の重要性を認識している。雪月花をうまく活用することで県の魅力や取り組みを全国的にPRできるのではないだろうか。人を輸送するという鉄道本来の目的からは外れているかもしれないが、鉄道を宣伝媒体として活用する戦略があってもよい。東急にとっても、自社にもメリットがあるならこの構想に乗らない手はない。むろん、髙橋社長が言うとおり、東急だけでできる話ではなく、JRを含む多くの関係者の協力は欠かせない。
鉄道開業150年を迎えた2022年はコロナ禍によって大がかりな鉄道イベントを行うことができなかった。しかし、新型コロナウイルス感染症が5類に移行する5月以降は、昨年やりたくてもできなかったユニークな試みをどんどん実行してもよいのではないだろうか。
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