医師に聞く「暖房なし」で朝までぐっすり眠る方法 深い睡眠に辿り着けるのは「入眠後4時間以内」

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この観点からみると、実は、ふとんの中をあたため続けるのはおすすめできません。自然な眠気をいざなうためには深部体温を下げなければいけないので、ぐっすり眠るためにはずっと身体があたたかい状態ではいけないのです。

ですから、あたたかくて気持ちいいからといって、湯たんぽを足に挟んだり、靴下をはいたまま眠ったりしていると、寝付けたとしても眠りは浅くなります。すると、何度も夜に目が覚めてしまったり、変な時間に起きてしまったり、朝起きたときにだるい感じが残ってしまったりするのです。

とくに冷え性の人は、深部体温のリズムが小さいという特徴があります。冷え症の人は血行が悪いために効率良く熱が発散されません。すると、深部体温の上下動の幅が小さくなり、そもそも眠気が訪れにくい傾向にあるのです。

効率的に深部体温のリズムを眠りに活用するには、寝る前に身体をあたため、ふとんに入ってからは熱を発散できるようにすることが大切です。

そのため、夜に冷え防止のために靴下をはくなら、ふとんに入る直前に脱ぐか、身体を中からあたため、血行を良くする工夫をしてみてください。

たとえば、眠りにつく約2時間前までにぬるめのお風呂にゆっくり浸ったり、生姜やトウガラシなどが使われた身体がポカポカする料理を食べたりと、血の巡りを良くすれば深部体温を上げることができます。そのあとで眠りにつけば、自然と深部体温が下がり、深い眠りに入っていくことができるのです。

「3秒で眠って」はできない

わたしのクリニックを訪れる方も、ここ数年で睡眠の不調を訴える人がぐっと増えました。とにかくみんな、元気がない。症状を自覚してクリニックに来てくださる人がこれだけ増えたのだから、「隠れ不眠」で少しの不調がある人はもっと増えているんじゃないかと危機感を持っています。

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ただ、どんな状況でもぐっすり眠れるかというと、残念ながらそう簡単にはいきません。わたしたちはまるで「ブレーキのついていないクルマ」のように、いきなり全力で走り出すことはできても、すぐに眠るのは難しいのです。この構造を理解していないと、いつでも休めると思って無理をしすぎてしまいます。

だからこそ、ぐっすり眠るにはその前の準備が大切です。同じく乗り物に例えるならば、「飛行機の着陸」。飛行機が空の上で徐々に高度を落として着陸態勢を整えるように、わたしたちも適切な段階を経て眠りにつく必要があります。

ほんの少しのことに気をつけるだけでも、睡眠の質は必ず高まります。寒い冬でも毎日ぐっすり眠って、元気に過ごしましょう。

白濱 龍太郎 睡眠専門医

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しらはま りゅうたろう / Ryuutarou Shirahama

筑波大学卒業、東京医科歯科大学大学院統合呼吸器学修了(医学博士)。公立総合病院睡眠センター長などを経て、2013年に「RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック」を設立。約2万人の睡眠に悩む人を救ってきた。自身がオンオフの切り替えが苦手だったことから、睡眠の大切さを幅広く発信。医療以外の場でも、マイクロソフトやPHILIPSなど世界的企業での講演や、日本オリンピック協会(JOC)強化スタッフとして選手村で選手のサポートを行うなど、ビジネスやスポーツ界からの信頼も厚い。慶応義塾大学特任准教授、ハーバード大学公衆衛生大学院客員研究員などを兼歴任。『ぐっすり眠る習慣』(アスコム)など著書やテレビ出演も多数。

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