今回の税制改正では見送られたが、一時は自動車への「走行距離税」が浮上した。EVが普及すれば、自動車関連税制も大きく変わる可能性がある。
2023年度の税制改正では見送られたものの、改めてクローズアップされたのが、電気自動車(EV)の走行距離に応じて課税する「走行距離税」だ。
車の燃費向上に伴ってガソリン税など燃料税の税収が細っていること、人口減少やカーシェアリングによって車の保有台数自体が減っていること、中国や欧米で普及しているEVは今の税制では課税が難しいこと、などを見据えての政策転換であろう。
車離れでも1台当たりの税金を増やす政策
すでに政府は2018年、“保有から利用へ”という表現をもって、将来的な走行距離税導入の意図を明白にしていた。利用時の税は上げるが保有に関する税は減らすという、アメとムチを示し、みんなが増税となるわけではないことをにおわせることで、理解を求める。
だが、人口減などによって保有台数が減少しても、税収を確保するのが動機である以上、1台当たりの税額を増やす政策であるのは明らかだ。EVに限らずすべての車が走行距離税の対象になることもありうる。課税のやり方を抜本的に変えることで増税を実現するのが行政の意図と考えていい。
もちろん税負担の公平性は考えなければいけない。現在のEVは、自動車税や自動車重量税が支払われているものの、走るための電気は無税。道路特定財源は2009年度に一般財源化され、自動車関係の税金が道路整備に直結する時代ではないが、それでもEVだけ無税はさすがに公平といえない。
しかし、それを前提にしても、走った距離に応じて課税を行う走行距離税には、問題が多い。
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