2023年度の公的年金は調整率0.6%を差し引き、68歳以上で2.5%増、67歳以下で2.8%増になる。
公的年金は本当に大丈夫なのか━━。
2023年度の年金額は、前年度と比べ、68歳以上は1.9%増、67歳以下は2.2%増となることが決まった。物価の上昇が続く中、3年ぶりの増額は受給者にとってうれしい知らせ。だが、賃金や物価より低い伸び率にとどまるため、実質的には0.6%の目減りとなる。
つまり、本来であれば、68歳以上は2.5%増、67歳以下は2.8%増になるはずだった。
年金額は年度ごとに改定されている。2000年度の制度改正以前は、毎年度の年金額を「物価の変動」に連動させつつ、5年ごとに「賃金の変動」を反映する仕組みだった。物価に連動することで年金の実質価値を維持し、5年ごとに年金生活者の生活水準を現役世代の生活水準の変化、つまり賃金の変化に合わせる仕組みだった。
2004年度に決まったマクロ経済スライド
年金財政の主な収入は保険料であり、賃金に連動して変化する。このため、年金財政の支出である給付を賃金に連動させることで、年金財政のバランスを維持する仕組みでもあった。
しかし、この理屈は、現役世代と引退世代のバランスが変わらない場合しか、成り立たない。少子化や長寿化が進む日本では、財政バランスの悪化が進む。そこで2000年度の制度改正では、受給開始後の年金額を物価だけに連動させることになった。当時は賃金の伸びよりも物価の伸びが低かったため、見直しで給付の伸びを抑えることが期待された。
それ以前は、少子化などに合わせ将来の保険料を引き上げ、年金の実質的な水準を維持する仕組みだった。しかし2002年に公表された試算では、当時の給付水準を維持するには将来の保険料を当時の倍近い水準に引き上げる必要がある、という厳しい見通しになった。
結果として2004年度改正で導入が決まったのが、「マクロ経済スライド」だ。将来の現役世代の負担を考慮し保険料の引き上げを2017年度にやめ、代わりに、年金財政が健全化するまで、“給付を段階的に目減りさせる”仕組みである。
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