2021年には合計特殊出生率が1.30まで下がり、2022年には出生数が初めて80万人を割りそうなくらい、日本の少子化の現状は深刻である。
岸田文雄首相は「異次元の少子化対策」を唱え、今通常国会の施政方針演説では、最重要政策のひとつと位置付けた。経済的支援の強化、子育てサービスの拡充、働き方改革の推進を三本柱に掲げるが、実現までの道のりは簡単ではない。
ではどのような手を打てば、少子化に歯止めをかけられるのか。教育経済学が専門の中室牧子・慶應義塾大学総合政策学部教授兼東京財団政策研究所研究主幹に聞いた。
児童手当への所得制限はなくていい
━━児童手当(ゼロ歳から中学生まで月1万~1.5万円支給)で議論が沸き起こっています。現状では年収960万円以上1200万円未満には「月5000円」、年収1200万円以上には「支給無し」(2022年10月~)ですが、これらについてどうお考えですか。
児童手当に限って言えば、所得制限は不要と考える。ドイツの産休給付制度改革を評価した論文によれば、出産の機会費用(休業や退職による経済的損失)の高い高学歴・高収入女性を対象にした経済的支援を行ったことが出生率の改善につながった、とのエビデンス(証拠)があるからだ。
所得制限によって捻出される財源で待機児童問題を解消するというが、出産の機会費用の高い女性の出生率が下がることの”負の効果”と、待機児童の解消による”正の効果”が打ち消し合って、少子化への効果はゼロということになるかもしれない。制度変更のコストを支払い、児童手当の支給対象とならなかった世帯の不満も募ったのにもかかわらず、結果、少子化を改善する効果がなかったというのは避けたい。
そもそも、児童手当の所得制限に対する不満が根強いのは、支給の有無の決定が不公平なことにある。年収は夫婦のうち収入が高いほうを基準とするため、例えば夫婦の年収がそれぞれ600万円(世帯計1200万円)の世帯は支給対象になるが、夫の年収が1200万円で妻が専業主婦の世帯は支給対象にならないという矛盾が生じる。
私はかねてから、再分配のあり方はもっと時代にあった方法にアップデートすべきだと主張してきており、所得というたった1つの指標で支給の有無を決定すべきではないと考えている。
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