ホンダは「S660」で"らしさ"を取り戻せるか 異例の新車プロジェクトの舞台裏
価格は200万円前後と軽自動車としては高めの設定だが、事前受注は1カ月で3000台に達している。スポーツカーの要であるボディの精度を高めるため、ロボットと人の作業を組み合わせて溶接を行うなど、通常の車より手間がかかることから、1日に生産できるのは40台。今注文しても、8月以降でなければ手に入らない状態になっている。
ホンダによれば、予約注文をしている顧客層は子育てが一段落した中高年の男性が中心だという。この層には1970年代後半に沸き起こった「スーパーカーブーム」を経験し、スポーツカーを含め様々な車を乗り継いできた人が多い。ホンダは、日本車で唯一スーパーカーとも呼ばれた「NSX」を始め、こだわりのスポーツカーを世に送り出してきた。
ブランドイメージを作る”アイコン”
1991年に発売された軽自動車のスポーツカー「ビート」は、5年間で累計3万4000台を売る人気を博した。だが、バブル崩壊というタイミングの悪さや、ホンダ自身が「オデッセイ」で牽引したミニバンブームによってスポーツカーの市場が縮小し、1996年で生産を終了した。
その後、1999年に発売した「S2000」は国内で累計2万3000台を売ったほか、欧米でも根強い人気を誇ったが、排ガス規制の強化や、故障発生時に警告ランプでドライバーに故障の種類を知らせる機能の搭載義務が各国で拡大したことを受け、2009年に生産を終了している。
相次いで姿を消していったホンダのスポーツカーだが、2005年に生産を終了した「NSX」は今年始めの米モーターショーで新型を初披露した。現地で量産し、今年後半にも米国での発売予定だ。2016年中には、中国や日本、欧州、アジアでの販売も計画している。
日本本部長を務める峯川尚専務執行役は今回のS660について、「ホンダのブランドイメージを作るアイコンのようなモデルなので、大事に育てたい」と話しており、低迷する国内販売の起爆剤としての役割も期待されている。こだわりのスポーツカーで「ホンダらしさ」をアピールし、息の長い定番モデルに育成できるのか。少なくとも、一時のブームで終わらせるわけにはいかない。
(一部敬称略)
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