このように「機能」を見立てると、その機能がはたらく「シチュエーション」までイメージでき、次々とアイデアが膨らんでいきます。シチュエーションをうまく再現できれば、その状況が人に与える印象をそのまま活用することができるのです。
最後に紹介するのは「御札の湿布」です。これは「動き」を見立てたアイデアです。ジムのロッカーで着替えているおじいちゃんの背中に貼られている湿布を見たとき、思ったのです。
「なんで湿布は真っ白なデザインなのか?」
「もっとデザインできるのではないか?」
この疑問が、アイデアを考えるきっかけでした。そこで湿布の「手で貼る」という特徴に注目し、その行動がもっと楽しくなるアイデアを考えてみようと決めました。既存の湿布をもっとよくしたいので、これは「特徴を伸ばす」というアプローチになります。
そこで、湿布と同じように「四角いものを手で貼る」という動作と似たものを考えてみたところ浮かんだのが、「御札」です。御札も湿布と同じように手を使って貼りますし、サイズ感も同じくらいです。
これをそのまま合体させたら、親しみを持たれるアイテムになるのではないか。そう思い、御札のデザインを湿布に施してみたところ、思ったとおり、面白くてかわいい仕様になりました。
ですが、インパクトを持たせるにはもうひと工夫が必要です。そこで、コンセプトを後付けしました。
御札はおもに「悪霊を封印するために貼る」ものです。それに見立てた湿布なので、勢いよく貼ることで、「痛みを封印する」ような気持ちにもなれるというコンセプトを設定しました。
こうして、湿布を貼る動作を御札を貼る動作に見立てた、「貼ることが楽しくなる湿布」が完成しました。このように「動き」を見立てることで、「動きの再現性」だけでなく、その動作を体験したユーザーの「気持ち」まで再現できるのが、「動き」を見立てる発想法の特徴ともいえます。
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