「幸福な人」と「不幸な人」を分けるのは何なのか 幸福になることよりも「不幸」に気をつけよ

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このドン・ファンの態度を一般化してみましょう。時間との関係で表現すれば、ドン・ファンの生き方は、目標を未来に求める、という構造をしています。

これは、フランスの哲学者ジャン=ポール・サルトルが、「未来への投企(プロジェクト)」と呼んだものです。手に入れたい目標が未来にあり、そのために情熱をこめて活動するわけです。このプロジェクト型の活動は、ドン・ファンだけでなく、ごく普通の生活や仕事でも採用されています。

このタイプの活動は、狙ったものを手に入れると目標に達しますので、一見したところ幸福になりそうに思えます。

ところが、ドン・ファンと同じように、いったん目標が手に入ると、それは用済みになってしまいます。新たな目標が、再び立てられ、そこへ向かって邁進するわけです。そして、これが繰り返されます。この活動は、新しい目標に向かっているときだけワクワクさせますが、目標に達するとそれには興味がもてなくなるのです。

ドン・ファン型の活動は、その意味や意義を未来に求めるのですが、それによって現在(すでに手もとにあるもの)はつねに空虚になってしまいます。現在の不幸と未来の幸福、これがドン・ファンの活動の条件です。

しかし、こうした活動はいつまでもつづけることができません。未来への投企は、どこかで終わらざるをえません。ドン・ファンだったら老いたり醜くなったりすると、誰からも相手にされなくなります。

また、生活にしても仕事にしても、どこかでプロジェクトできなくなります。そのときには、未来のものを求めることができませんので、不幸しか残りません。

いかに不幸を遠ざけるか?

そう考えると、幸福について考えるよりも、不幸をいかに回避するかのほうが重要かもしれません。その代表的な考えとして、オーストリアの精神分析学者ジークムント・フロイトがこんなことを語っています。

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