静岡リニア「人を呪わば穴二つ」川勝知事の慢心 新幹線の県内停車頻度に関し首相に面会求める

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それどころか、森副知事は12月21日になって、4日の県専門部会の議論を基に、JR東海、国交省へ5ページもの細かい意見書を送ってしまった。ほとんど科学的とはいえない委員の個人意見に基づいているが、事業者のJR東海はすべてに回答を求められ、これでまた多くの時間が割かれることになる。

その中に、「高速長尺先進ボーリングにおける湧水への対応」という項目に、「(山梨県内で行う)水抜きがあり得る高速長尺先進ボーリングが静岡県の地下水圏に近づくことは同意できない」と記されていた。

日本地下水学会HPに、「地下水とは動的な水であり、地下水脈がどのように流れているのかわからない」と書かれている。県水資源課に「静岡県の地下水圏とはどういう意味か?」と尋ねたが、担当課長は回答を逃げてしまった。

閉鎖された帯水層の地下水でない限り、静岡県、山梨県の地下水に県境があるはずもない。すべてJR東海の南アルプストンネル工事を許可しないためのいやがらせでしかない。

一方、川勝知事のほうは、神奈川県の視察をきっかけに、リニア工事の関係都県の進捗状況等(用地取得率、工事進捗率など)を出すよう求める意見書を2022年11月25日にJR東海と国交省に送っている。

「全線における用地取得、工事の契約および工事状況等については当社のホームページで公表している」というJR東海の回答に激怒した川勝知事は、12月23日、「用地取得などの公表についてJR東海を強く指導するよう要請する」という意見書を水嶋審議官宛に送りつけた。

静岡県の着工拒否がリニア開業を遅らせている理由なのに、川勝知事は神奈川県へ責任転嫁できないか粗探しをしているにすぎない。

それどころか、さまざまな意見書を送り続けることが、リニア開業を遅らせる最大の原因となっている。リニア計画推進を目的としない重箱の隅をつつく意見書の回答を求められ、不毛な議論が続けられているのだ。

官邸がすべきことは、国の有識者会議発足で役割を終えた県専門部会を早急に解体させることである。

川勝知事は「立派な人」なのか

1月11日の会見で、「トップが立派でない人はダメ」などと述べて、川勝知事が今期で退任する田辺信宏・静岡市長の評価を貶めた理由をテレビ静岡の記者が尋ねたところ、川勝知事は「(田辺氏は)公益に資さない」「有権者から君(田辺氏)は出るなというふうに言われて、それを受けざるを得なかった。その評価の表れ」などと答えた。

これに対して、記者は「そうすると知事はご自身が、(トップとして)立派な人物であると自認しているのか」と聞くと、いろいろ横道にそれた後に「県民の評価に委ねる」と逃げた。「人を呪わば穴二つ」の例え通り、他人を誹謗中傷するだけならば、いずれ自分自身に返ってくる。

「公益に資さない」のが誰なのか、県民は見極めなければならない。

小林 一哉 ジャーナリスト

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こばやし・かずや / Kazuya Kobayashi

1954年静岡県生まれ。78年早稲田大学政治経済学部卒業後、静岡新聞社入社。2008年退社し独立。著書に『知事失格 リニアを遅らせた川勝平太「命の水」の嘘』(飛鳥新社)等。

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