静岡リニア「人を呪わば穴二つ」川勝知事の慢心 新幹線の県内停車頻度に関し首相に面会求める

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さらに、長期債務残高を基にしたJR東海の経営状態をシミュレーションすべきだとした。2037年の品川―大阪間の開業まで経営状態が万全かについてきちんと調査すべきという。2037年以降の話であれば、社会情勢が変わっているので前提条件が難しいことをシミュレーションにちゃんと盛り込めというのだ。

JR静岡駅のリニア案内板にあるひかり号、こだま号が増発されるという説明(筆者撮影)

実際のシミュレーション作業を担う水嶋智・国土交通審議官、上原淳・鉄道局長に対して「岸田首相らに恥を欠かせぬよう、もし、(川勝知事の意見書に沿った)シミュレーションができないならば責任を取れ」とまで述べている。

まるで脅しである。これではせっかく官邸が乗り出してきたのに、藪蛇となってしまう。

小手先のひかり号、こだま号の増発シミュレーションではまったく意味をなさない。これまでに静岡県が国交省、JR東海へ送った意見書の内容を見れば、川勝知事がリニア問題を解決する意思がまったくないどころか、「反リニア」の姿勢を貫いていることを官邸は正確に把握したうえで、静岡県への対応策を考えるべきだった。

川勝知事がリニア中央新幹線建設促進期成同盟会に加入したのは、リニア計画推進に舵を切り替えたわけではないのだ。

「えせ科学」のような意見書を送り続ける

静岡県は2019年6月に水資源の確保などに関する中間意見書をJR東海に送ったのを皮切りに、同年9月に47項目の意見書を送り、その解決策をJR東海に求めている。

47項目と言っても、実際には県専門部会委員による“似非(えせ)科学”としかいえないような、屋上屋を架す意見がずらりと並んでいるにすぎない。それだけでなく、県専門部会を開催するごとに、新たにトンデモない意見書をJR東海、国交省へ送り続けている。

約2年をかけた大井川下流域の水資源に影響がないと国の有識者会議が結論を出した後、県は専門部会の開催後に、新たな意見書をJR東海に送り、64項目もの課題について回答するよう求めている。

2022年10月31日の県専門部会では「静岡県内の湧水に影響が出ないよう、山梨県内の掘削工事をどこで止めるのか」という議論を強く求めた。もともとは、「水一滴も県外流出を許可しない」「静岡県の湧水は静岡県のもの」という川勝知事の無理筋の主張を踏まえたものである。

続いて、12月4日開催の県地質構造・水資源専門部会ではいつの間にか、山梨県内の掘削工事を止める議論を正当化させてしまった。

さらに高速長尺先進ボーリングについて、「先行探査が役割であり、地層を確認しながら行うので、大量出水はありえない」とJR東海がいくら説明しても、県当局、県専門部会委員は聞く耳を持たない。

県専門部会の会議後、筆者の質問に回答しなかった森副知事(静岡県庁、筆者撮影)

この議論の後、森貴志・副知事の囲み取材で、筆者は「県専門部会委員の意見は個人の知見に基づいている。研究者だから、どのような意見を言うことは構わないが、行政としての静岡県がもし、他県(山梨県)の工事をストップさせるのであるならば、十分な根拠を示すべきであり、そうでなければ、工事ストップに関わる補償をしなければならないのでは」と質問したが、森副知事は思ってもみない質問だったのか言葉に詰まり、周囲のスタッフに応援を求めたが、誰からも回答はなかった。

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