脱炭素に「機動戦士ガンダム」が一役買う理由 愛知県豊田市がタッグを組みイベントを開催

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本イベントは、同会場の従来のイベントと比較して3倍の集客になったという。トヨタ自動車の街であり、クルマ好きの親子が多いという豊田市は環境への関心がもともと高いというのもあるかもしれないが、ガンダムとクルマに関連したリサイクルや環境保護という切り口がうまく訴求した側面もある。

「ガンダムファン層の40〜50代は、豊田市の人口のいちばんのボリュームゾーンです。そこはカーボンニュートラルを知っていても、仕事で多忙な日々のなかでなかなか動き出せない世代という調査結果もあります。まず同世代に刺さること。そして、その子ども世代に一緒に興味をもってもらいたいという狙い通りの集客になり、会場の様子からもかなり手応えを得ています」(清水氏)

こうした親子でのイベント体験が実際の行動につながっていくことが期待される一方、豊田市は人気IPとのタッグという情報発信による都市のブランド力向上も図ろうとしているようだ。

ガンダムも環境問題に警鐘を鳴らす

40年前に生まれたガンダムは人口問題と環境問題に警鐘を鳴らしたが、それは40年後の現代社会においても形を変えながら課題として残っている。

豊田市はガンダムと共通するテーマを持ちながら、現在から未来へ目を向ける。2018年に街の50年後のビジョンを策定したが、そこでは街づくりだけではない人づくりによる“豊かさ”の実現を掲げ、いままさにその未来へ向けた取り組みに尽力する。今回のイベントもそのアクションの1つだ。

今回のイベントに出席した太田稔彦市長は「カーボンニュートラルの世界を目指すうえで、既存の取り組みや成り行きまかせでは実現は難しい。本来は国全体で同時に行動するのが理想だが、なかなかそうはならない。どこかがファーストペンギンの役割を担い、そこからいろいろな自治体が横展開していくのが現実的です。豊田市がそこを先導していきたい」と力強く語った。

市の特性を活かした新たなカーボンニュートラルIP施策で実績を上げた豊田市。環境保護先進自治体のロールモデルを自負しながら、今回の成果を1つの糧として、脱炭素と地方創生を両輪とする取り組みを加速させていきそうだ。

武井 保之 ライター

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たけい・やすゆき / Takei Yasuyuki

日本およびハリウッドの映画シーン、動画配信サービスの動向など映像メディアとコンテンツのトレンドを主に執筆。エンタテインメントビジネスのほか、映画、テレビドラマ、バラエティ、お笑い、音楽などに関するスタッフ、演者への取材・執筆も行う。韓国ドラマ・映画・K-POPなど韓国コンテンツにも注目している。音楽ビジネス週刊誌、芸能ニュースWEBメディア、米映画専門紙日本版WEBメディア、通信ネットワーク系専門誌などの編集者を経て、フリーランスとして活動中。

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