日銀が「黒田退場」で直面する異次元緩和の後始末 国債&ETFを爆買い、「ミスター日銀」候補に重圧

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「昭和の男」はひとたび仕事の場を離れてもそうだった。下戸の雨宮氏と違い、酒席を好む。ビール片手に、海外で出会った人や、乗った珍しい電車の話、若い頃に打ち込んだバレーボールの話などに花を咲かせる。人間味にあふれ、日銀内外からの人望が厚い。

2018年に副総裁を退任した中曽氏は、たびたび異次元緩和の問題点に言及してきた。自著ではこう吐露する。「金融緩和ばかりに頼るのはもういい加減にするべきだ」「設備投資や技術革新によって生産性を高めていくことが大切だ」。

市場関係者からは、中曽氏が総裁に任命されると、株価下落や円高加速などのネガティブな反応が引き起こされると懸念する声がある。何よりも中曽氏本人が総裁就任に難色を示しており、重圧に耐えてやり抜くモチベーションを保てるかが問題となる。

火中の栗を拾うのは誰か

実は雨宮氏も、中曽氏と同様、総裁就任に消極的な意思を示しているとも報じられる(野心家であるゆえ真に受けるべきではない、というのは元部下の弁)。

2人の腰が重い中、総裁候補の対抗馬として挙がるのが山口廣秀氏だ。白川前総裁時代に副総裁を務めた人物で、名実ともに白川氏を側近として支えた。2013年に総裁が黒田氏へと交代する際、日銀側は山口氏を「お目付け役」として再任させる方向で動いたが、安倍政権にはねつけられた経緯がある。

その山口氏はアベノミクスを批判してきたため、総裁に任命となれば「反安倍」の旗幟(きし)が鮮明になる。「アベノミクスの堅持」の旗を降ろしていない岸田政権は、方針との整合性がより問われることになるだろう。安倍派議員からの反発も予想される。

総裁は、日銀という組織の一枚看板だ。改めた政策を説明するのも、政府と渡り合うのも、国際舞台に立つのも、世論の反発を一身に受けるのも、総裁である。黒田日銀の宴(うたげ)は終わり、金融緩和の戸締まりが始まる。日本経済は新総裁の下、新たな時代へ向かおうとしている。

西澤 佑介 東洋経済 記者

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にしざわ ゆうすけ / Yusuke Nishizawa

1981年生まれ。2006年大阪大学大学院経済学研究科卒、東洋経済新報社入社。自動車、電機、商社、不動産などの業界担当記者、19年10月『会社四季報 業界地図』編集長、22年10月より『週刊東洋経済』副編集長

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