日銀が「黒田退場」で直面する異次元緩和の後始末 国債&ETFを爆買い、「ミスター日銀」候補に重圧

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

岸田政権は民間人の抜擢も模索しているとされる。が、購入した膨大な金融資産の処分、超低金利政策の修正と、何一つ簡単な政策課題がない中、日銀関係者、エコノミストの大多数が求める新総裁の条件は次のようなものだ。「複雑な日銀の金融政策を理解し、内外と細かい調整ができ、情報発信ができる人」。 

ならば、日銀プロパー以外に適任はいない。有力候補はいずれも「ミスター日銀」と称されてきた人である。

雨宮正佳氏。1990年代後半から、ほぼ一貫して花形の企画部門(金融政策の担当部署)を歩み、2000年代から将来の総裁候補と目されてきた。

日銀内で量的緩和政策をいち早く提唱し、四半世紀にわたり非伝統的金融政策に関わってきた。元同僚が言う彼の特徴は「融通無碍(むげ)」。学究肌の理論家というよりも、政治や世論の声をくみ取るのに長け、複雑な利害を調整し、斬新な政策にまとめ上げる力が特徴だ。

雨宮氏は1955年、甲州の地方豪族の家系に生まれ、東京大学経済学部では宇沢弘文ゼミに所属。経済学の知識を生かすため日銀に入行した。玄人はだしの音楽知識も持ち、日銀広報誌ではたびたび音楽家との対談を行っている。

2014〜2018年に理事(金融政策担当)、2018年から現在まで副総裁と、黒田日銀の右腕となってきた。そんな雨宮氏を、異次元緩和に批判的な日銀OBや官僚は、冷ややかに見る向きもある。だが一方で、現在の黒田東彦氏と雨宮氏の間には隙間風が吹いている、と複数の日銀関係者は指摘する。

黒田氏が2022年6月の講演で「家計の値上げ許容度が高まっている」と発言して物議を醸した一件も、黒田氏との連携が密だった時期ならば、雨宮氏は角が立つ事態を察知し、発表前に修正できた可能性は高いという。

プリンスor国際派

もう1人の総裁候補は、雨宮氏が金融政策に関わっていた2000年前後、行内で金融システムの維持に奔走していた人物である。

中曽宏氏。日本で大手金融機関の破綻が相次いだ1990年代後半の平成不況期や、2008年のリーマンショック時に幹部として対応に当たった。危機管理のプロであると同時に国際派としても知られ、2000年代半ばにBIS(国際決済銀行)市場委員会で議長を務めたことから、世界の中央銀行幹部と人脈がある。

東京大学経済学部では小宮隆太郎ゼミに所属。ゼミの先輩である前総裁の白川方明氏に誘われて1978年に日銀に入行した。

昼夜を問わず働き「昭和のサラリーマン」を自認する。元部下によると「こんなに仕事をする人がいるのかというほど仕事をする。さまざまなリスクを洗い出して、何重にも確かめていた」。

次ページたびたび異次元緩和の問題点に言及
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事