ライオン、高単価の「新感覚」柔軟剤で反撃なるか 日々の洗濯体験を「前向きな習慣に変える」

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ライオンの新柔軟剤「ソフラン エアリス」
2023年4月発売予定の「ソフラン エアリス」。柔軟剤では珍しい透明な容器で軽やかなイメージを演出している(記者撮影)

「3年間、苦しい思いで待ち続けたが、ようやくこの時を迎えることができた」

2022年11月28日、日用品大手メーカー、ライオンの掬川正純社長は、経営戦略・新商品発表会の席上、感慨無量の表情を浮かべながらこう語った。2023年4月にも柔軟剤ブランドの「ソフラン」から新たな製品「ソフラン エアリス」を発売すると発表したことを受けてのものだった。

柔軟剤は、現在約8割の家庭が使用しており、洗濯用洗剤に続いて大きなカテゴリーだ。ただ経済産業省のデータによると、2017年に約1136億円だった柔軟剤市場は2021年までの5年間で約6%の成長止まりと、頭打ち感が見受けられる。

ライオンは、現在の柔軟剤市場が「防臭」あるいは「香り」をアピールした2パターンの商品で飽和しており、差別化された商品が現れていないことが市場成長鈍化の原因と考えた。そこでエアリスでは、「日々の洗濯体験全体をポジティブで楽しいものにする」という今までとは違った点をアピールする。

新柔軟剤「エアリス」について「洗濯という気が進まない習慣を前向きなものに変えていく」と話したライオンの掬川社長(右)(記者撮影)

掬川社長は、「新たな香りの体験や、透明なパッケージなど異なるコンセプトの新製品を打ち出すことで、洗濯という気が進まない習慣を前向きなものに変えていく」と語り、「人々の意識や行動を変えることで、高単価な付加価値製品を浸透させる」と意気込む。

成分と技術を大幅に変更

エアリスは、その中身はもちろんのことパッケージに至るまで、新たなコンセプトに合わせて抜本的に見直している。最も大きな違いは、成分と技術の変化だ。

まず、柔軟剤の主成分として多くの商品で使われてきた「カチオン界面活性剤」を、新たな独自成分「特殊シリコーン」に変更した。これにより既存製品にはない透明な液剤を実現、ボトルも透明にして軽やかなデザインを作り上げた。また成分の変更により、これまでの商品と比べて衣類の摩擦も約20%低減しており、着心地や肌触りなど触覚面も進化している。

次に、香りに関する技術の変化だ。

既存の柔軟剤の多くは、洗濯物が乾いた後の香りを重視しているが、エアリスでは洗濯をする過程全体における香りの体験を意識しているという。洗濯機の蓋を開けてから、瞬時に香りが空間に広がる技術を採用したことで、衣服の着用時のみでなく、洗濯をしている最中も香りを感じられるものに仕上げた。

香りの抽出方法にもこだわり、「従来の柔軟剤では花びらに熱を加えていたため、本体の花と異なる香りを放つことがあった。今回は自然の状態の花の香りをそのまま捕集したことで混じり気のない香りを実現している」(ライオンの担当者)という。

こうした差別化によりエアリスは、既存製品と比べて30%程度単価を引き上げる方針。掬川社長は「柔軟剤は大型新製品の第1弾。来年に向けて第2弾、第3弾と柔軟剤以外のカテゴリーでも大型新製品を仕込んでいる」と語り、付加価値製品の拡充による単価上昇を狙っている。

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