大井川鉄道、蒸気機関車「動態保存」へのこだわり 鉄道車両の保存には経験と費用が不可欠だ

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整備と修繕はボランティア団体の「かぼちゃ電車保存会」が行っており、筆者が取材した当日も、良好な状態で保存されていることが確認できた。

場所は新潟交通のバス路線(W8系統味方線)の終点、月潟バス停から中ノ口川の土手に向かって徒歩3分ほど歩くと、古い木造の架線柱が見えてくる。その先に鎮座しているモハ11号。旧月潟駅のホームに停車している形で保存されており、今でも現役当時の姿をうかがい知ることができる。

廃線から23年経ったが、ボランティアスタッフの努力によって、保存状態は極めて良好である。この駅と車両を利用してのイベントも頻繁に行われており、中でも2022年10月9日に行われたイベントでは、入替用のアント(車両移動機)を利用して、モハ11を数十メートル走行させるというものであった。廃線から23年ぶりの復活運転といってもよく、新潟交通電車線を知らない若い世代に、当時の様子を語ることのできる絶好の機会だった。

残念ながらイベント当日は多忙で参加することができなかったが、次の機会にぜひ、その様子を見てみたいと思っている。

鉄道は地域の大事な遺産

鉄道車両の保存は全国各地で行われており、その保存方法である動態保存と静態保存について、その活用にさまざまな方法があることを紹介した。

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どちらにしても保存活動は、多くの費用や経験などが必要であり、保存の仕方だけとっても、技術の伝承が大事である。

昨今、自然災害や少子高齢化によって、鉄道の需要が減りつつあるといわれている。鉄道に新しい価値を見いだすことが、迫られている状況だ。

そんな中、その土地の歴史に欠かすことのできない生き証人としても、鉄道は地域の大事な遺産だと考えられる。

渡部 史絵 鉄道ジャーナリスト

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わたなべ・しえ / Shie Watanabe

2006年から活動。月刊誌「鉄道ファン」や「東洋経済オンライン」の連載をはじめ、書籍や新聞・テレビやラジオ等で鉄道の有用性や魅力を発信中。著書は多数あり『鉄道写真 ここで撮ってもいいですか』(オーム社)『鉄道なんでも日本初!』(天夢人)『超! 探求読本 誰も書かなかった東武鉄道』(河出書房新社)『地下鉄の駅はものすごい』(平凡社)『電車の進歩細見』(交通新聞社)『譲渡された鉄道車両』(東京堂出版)ほか。国土交通省・行政や大学、鉄道事業者にて講演活動等も多く行う。

 

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