大井川鉄道、蒸気機関車「動態保存」へのこだわり 鉄道車両の保存には経験と費用が不可欠だ
山本さんはこうも言う。「該当機の復活に限らず、当社はSLを中心とした観光列車運転を中心として、路線を維持していくという方針を昭和40年代から始めており、営業用に使うSLを充実させることは、過去からの考え方を継続していくために、不可欠なものと思っています」。
少子高齢化による人口減少やコロナ禍によって、地方鉄道が疲弊していく中、大井川鉄道に限らず、SLによる需要は大きい。
クラウドファンディングに挑戦する経緯とは?
復活には、3年ほどを見込んでいるという。費用はおよそ3億円。 「2020年に始まったコロナ禍は暗い影を落とし、私たちも例外ではなく利用者は少なくなり、その分、企業としての体力は落ちています。クラウドファンディングで1億円の目標を作り、動態化に関わる資金を集める必要があるわけです」。
同社の使命といえる、「昭和時代の鉄道文化を未来にわたって伝承していく」を考えると、クラウドファンディングを使いながら動態化を進めていくことは重要なことではないか、と山本さんは考えている。
鉄道の保存とは、歴史や価値を後世に受け継がせるばかりではなく、先人たちが使っていた技術や知識を学び、新たに発想していくものであり、使命高きプロフェッショナルがいる限り、鉄道保存に対する意識は、未来へ強固に受け継がれていくことであろう。
次に静態保存のケースを紹介しよう。全国には、鉄道車両の静態保存を目的としたボランティア団体が数多くある。保存されている車両の中には、動力源を安価な方法で改良し、稼働できる保存車両も存在している。
その中の一つが、「かぼちゃ電車保存会」が静態保存している、新潟交通電車線・旧月潟駅である。新潟交通電車線は、新潟市内の白山前(旧県庁前)―燕間の全長36.1kmを結んでいた軌道路線である。1933年8月15日に全線開業し、地域の鉄道として長年親しまれたが、1999年に66年の歴史に幕を下ろし、全線廃線となった。
その廃線が決定した際、鉄道研究者や鉄道ファンなどから駅舎や車両の保存を求める要望が上がり、当時の月潟村と新潟交通がそれを了承し、月潟駅の駅舎ホームと車両(旅客車1両<モハ11>、事業車2両<キ116・モワ51>)を静態保存した。
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