大井川鉄道、蒸気機関車「動態保存」へのこだわり 鉄道車両の保存には経験と費用が不可欠だ

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大井川鉄道は静岡県島田市に本社を持ち、東海道線と隣接する金谷駅から千頭駅を結ぶ大井川本線と、千頭駅から井川駅を結ぶ井川線の2路線を保有している。大井川本線は大手私鉄で活躍していた車両が譲渡され運行に就いており、その懐かしさゆえに訪れる人も多い。まるで路線自体が、鉄道動態博物館といったところだ。

蒸気機関車の復活運転としては、1970年11月に井川線千頭―川根両国間で運行された遊覧列車からといわれ、同時にわが国におけるSLの動態保存の始まりとされている。

現在も運行されている大井川本線の蒸気機関車の復活運行は1976年7月9日から行っており、同社は日本の「SLの動態保存発祥の地」であるとともに、動態技術のスペシャリストといえる。

現在はC10形(8号機)、C11形(190、227号機)、C56形(44号機)が活躍しているが、2025年に迎える創立100周年記念企画として、静態保存されていたC56形135号機の動態復活を目指している。

この壮大なプロジェクト全体にかかる費用として3億円を見込んでいるそうだが、2022年9月20日から11月30日まで71日間にわたり、クラウドファンディングを活用して、1億円にチャレンジする企画を行った。支援者総数 4313名、支援額合計 8422万6200円という、これまでの鉄道関係クラウドファンディングにない規模の支援結果となった。

これらの企画について、プロジェクトの担当者である大井川鉄道広報担当・山本豊福さんは100周年記念事業に、SL(蒸気機関車)の復活についてこう述べる。

「当社は国鉄からSLが消えた年にSLの本線営業運転を始めました。つまり、消えゆくものを必死になって守り抜く使命を背負ったともいえます。当社でSL運転の継続をしなければ、日本から動くSLはなくなってしまうという重大な役割を担っているのかもしれません」

さらに、「SLは懐かしい乗り物から珍しい乗り物に変化していると思います。小さい子供や将来、生まれてくる人たちにもSLを伝えなければならない、という使命も持っています。記念事業は100年という節目を超えても、私たちが守ってきた【昭和時代の鉄道文化を未来にわたって伝承していくのだ】という決意の表れです」。

なぜ、C56-135が選ばれたのか?

「当社はつねづね、SL列車を中心とした観光列車(プラスして文化的にも価値のある歴史的な車両)を運転することで、路線を維持してきたのでSLは絶えず必要なわけです。残念なことに2019年位から車両の不具合が目立ちはじめ、運転を安定化させることが必要となりました。そこに兵庫県加東市にあるC56 135が荒廃のため、解体になりそうだという情報が入りました」

関係者が調査したところ、動態化できる可能性が高いという結論が得られ、関係各所と話し合い、2022年2月、新金谷に搬入したという。

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