日本の新聞にないニュース英語「比喩表現」の凄み 「生きた語彙・英語表現」を学ぶことができる

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そんな要請があることはパウエル議長もよく認識しているのですが、この社説も認めているように、“パウエル氏が2012年にFed入りして以来、Fedは緊急時だけ定例のFOMC会合の合間に動きをとってきた”(Since Mr. Powell joined the Fed in 2012, the central bank has taken action between meetings only during emergency times)のでした。

つまり、よほどのことがない限り、Fedは定例のFOMC会合以外では行動を起こさなかったということです。

では、Fedが何らかの動きをとった緊急時とはどのようなときだったのでしょうか。それは、“such as”の後に書いてあります。

日本人にはなかなか発想できない

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すなわち、“パンデミックの初期に見られたように、金融市場がパニック状態になり、経済が急速に昏睡状態に陥っていたとき”(the early days of the pandemic, when financial markets were panicking and the economy was rapidly going into coma)のような緊急時には、Fedも定例のFOMC会合以外にも緊急会合を開いて行動をとったことがあったのでした。

このように、金融市場などが暴落するなど大混乱してパニック状態に陥っていることを“coma”(昏睡状態)と比喩を使って表現するレトリックは、日本人にはなかなか発想できないものです。

かつてフランスのマクロン大統領は、トランプ大統領がNATOを無視するような言動をしたためNATOが機能停止に陥ってしまったとして、NATOのことを“脳死状態”と形容したことがありましたが、“coma”もそれとほぼ同じ意味で使われていると言ってもいいでしょう。

訳:
どんなに小さな動きであったとしてもFedが今動けば、Fedは年に8回開催される定例会合のときだけでなく、自らが必要と判断したときにはいつでも素早く動くことができるということを世界に再認識させることができるだろう。
パウエル氏が2012年にFed入りして以来、Fedはパンデミックの初期のように金融市場がパニックになり経済が急速に昏睡状態に陥ったような緊急時にしか定例会合の合間に行動をとったことはなかった。
三輪 裕範 経済評論家

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みわ やすのり / Yasunori Miwa

1957年兵庫県生まれ。1981年神戸大学法学部を卒業後、伊藤忠商事に入社。
1991年にハーバード・ビジネス・スクールにて経営学修士号(MBA)を取得。その後、ニューヨーク店経営企画課長、大蔵省財政金融研究所主任研究官、経団連21世紀政策研究所主任研究員、伊藤忠商事会長秘書、調査情報部長、伊藤忠インターナショナル上級副社長(SVP)兼ワシントン事務所長等を歴任。2017年にはジョンズ・ホプキンス大学大学院高等国際問題研究所(SAIS)の上級客員研究員を務める。英検1級、TOEIC満点9回取得(2022年8月現在)。
 

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